明海大学不動産学部 不動産の不思議 学生たちの視点と発見 第92回 空き家問題 住環境を地域で考えよう
住宅新報 2015年7月14日 号 9面
【学生の目】
最近「空き家問題」をよく見聞きする。13年度住宅・土地統計調査(総務省統計局)によれば、総住宅数6063万戸のうち空き家は820万戸で、空き家率は13.5%と過去最高となった。民間賃貸住宅は、その約24%。4戸に1戸は空室だ。
賃貸住宅で空室が増えると、収入が減少して必要な費用がかけられず、老朽化や劣化が進む。たたずまいに活気がなく、外観がみすぼらしくなる。災害に弱く危険な印象となり、入居者を集めることが一層困難な悪循環に陥る。
空き住戸の多い賃貸住宅では、郵便受けは錆び(木下さわこ「不動産の不思議第9回」13年11月19日号)、雑草が伸び、放置自転車が景観を損なうなど、手入れが行き届かない。防犯や防災も課題だ。この住宅がある浦安市は、千葉県とはいえ東京駅まで12~16分と交通至便で、多様な需要があって賃貸市場は厚い。空室は経営の問題と思える。地元住民としてオーナーに経営意欲と能力があれば、と残念だ。
この状態に合理性があるだろうか。所有者は維持管理の手間と費用を省略できる。収益ではなく、所有の継続が目的と考えられる。次に、入居者はどうか。管理不全で家賃が安いとすれば、人気の地域に安く住む合理性がある。しかし、外部不経済を受ける地域にはいずれも不合理である。資産価値が下落すれば実損もある。
所有者の合理性と、地域の不合理性をどうするか。所有者は法令の制限内において、自由に所有物の使用、収益、処分をする権利を有する(民法206条)。一方、私権は公共の福祉に適合しなければならない(民法1条)。前者は所有者の合理性を、後者は地域の合理性を尊重する。
10年に埼玉県所沢市で「所沢市空き家等の適正管理に関する条例」が誕生した。空き家が放置され、管理不全となることを防止して生活環境の保全や防犯まちづくりを進めるためで、初の空き家条例である。国土交通省によると、15年には条例数は350を超えた。時代は公共の福祉優先に動いている。
所有権の自由を認めすぎると地域の混乱や迷惑を止めることができない。一方で公共の福祉を優先しすぎると、私権の制限や対策のために税金が使われやすく、財政圧迫につながりかねない。住宅の価値や住環境をみんなで考え、自分たちで創る時代が来ている。
【教員のコメント】
超高齢者社会の安寧に不可欠のリバースモーゲージの成否は住宅の資産価値が握る。需給が崩れる人口減少期の資産価値は、競争に勝つ地域の力に裏打ちされるが、地域の枠組みは弱い。空き家対策を地域の枠組みづくの契機としたい。
























