日本不動産研究所 全国の地価 ~その軌跡と変わる街 (48) 岩手県・地価が落ち着いてきた沿岸南部6市町 集団移転先へ転居進む
住宅新報 2015年5月5日 号 12面
県の短期動向調査
岩手県では県が岩手県不動産鑑定士協会に調査委託して、沿岸南部に所在する6市町19地点について、短期地価動向調査を年4回行っている。東日本大震災により甚大な被害が生じた沿岸地域において、土地取引動向を注視し、国土利用計画法の監視区域の指定について検討を行うと共に、土地取引の指標としての活用を目的としている。
最新の14年度第4四半期(15年1月1日時点)によると、住宅地全体の各調査時点における直近1年間の平均変動率は5.0%上昇(14年10月時点=5.7%上昇、同7月時点=6.1%上昇)、同じく直近3カ月間では0.8%上昇(同1.2%上昇、同1.3%上昇)と、上昇幅が縮小しており、上昇カーブは徐々に緩やかになっている。
商業地全体の各調査時点における直近1年間の平均変動率は1.8%上昇(同2.3%上昇、同3.0%上昇)と上昇幅が縮小しており、直近3カ月間では0.2%上昇(同0.1%上昇、同0.7%上昇)と最近2回の調査はほぼ横ばいで推移している。
各市町ごとに代表的な住宅地1地点を抽出し、地価変動率の推移を示したのが別掲グラフである。もともと少子高齢化で過疎化の波が押し寄せていた地域であるため、価格水準は高くないが、変動率の動きが激しい。
震災後しばらくは特定地域(高台等の被災を免れたか被害が軽微であった地域)に対して移転需要が集中し、一部に大幅な上昇がみられたが、その後、市町ごとの復興計画や具体的な土地利用方針が示され、多くの被災者が仮設住宅などに入居しながら移転候補地の決定や住宅地整備等を待つ段階になり、土地取引に落ち着きが出てきた。
例えば、13年1月時点では、大槌町大ケ口地区が、被災者の移転需要が集中し地価が1年間で約1.5倍に上昇したが、その後は工事関係者らの拠点確保などといった地元外の需要が収まり、需給が均衡しつつあることから現在の地価はピークを過ぎたとみられる。
最近では防災集団移転促進事業(防集)や漁業集落防災機能強化事業(漁集)の移転先団地の造成、分譲が相次ぎ、仮設住宅等に入居していた人たちの転居が進んでいる。また、土地区画整理事業による水産加工団地などの事業用地の整備により基幹産業である水産業の復活や雇用の創出も期待される。
復興へ課題山積
なお、国が示している集中復興期間は15年度でいったん区切りを迎えるが、原材料費の高騰に加え、20年の東京五輪・パラリンピックに向けて人手不足の深刻化が懸念されるなど、課題は山積しており、新たな支援の枠組みが注目される。
(日本不動産研究所盛岡支所、不動産鑑定士・昆野吉隆)


























