鑑定士のつぶやき 人口動態で街を分析 多面検証し有益情報を
住宅新報 2015年3月3日 号 9面

田畑惣臣(たばた・ふさおみ)不動産鑑定士
一般には高齢化や人口減少は地価水準にマイナスの影響を、若い世代の人口増加は地価水準にプラスの影響を与える傾向があると考えられる。本格的な少子高齢化社会に突入し、私たち不動産鑑定士にとってもこれらの分析は不可欠となっている。ただし、影響には多様なケースがあり個々の市場価値の判断には慎重な実態調査が必要となる。
奈良のある事例
一つの例として商業施設の収益性をとりあげる。
奈良県のある地域では若い人々が流入し新しい住宅地も増えてきている。この情報からはその地域の商業施設の活況も想像できるだろう。しかし、分析調査などからは違う側面も見えてくる。
この地域では若い夫婦の世帯が増えているが、住宅ローンや子育ての費用によって財布のひもは固く、車の通行量が増えたため施設への出入りが不便に、更には若い人の活動範囲は広いため郊外の大規模店舗への流出も大きくなってしまった。
このためこの地域の商業施設の収益性は、低迷傾向にある。他方で別の高齢化が進んでしまった地域では、子育ても終わり経済的なゆとりを持った客層が安定した高い収益を地域の商業施設にもたらしているケースも認められた。
もちろんこれらの例は現在の状況であり、長期的な視点での人口動態が与える影響は軽視できない。ただ、家計の貯蓄率がマイナスに転じるなど大きな変化の中、健全な社会の発展のためには、適時、多様な視点から把握される地域の特色に即したきめ細やかな対応が必要となる。
私たち不動産鑑定士も専門家としての業務の中で、指標となる適正な価格や地域の活性化に繋がる有益な情報を提供し、今後とも県民の、また国民の皆様の幸福と発展に寄与できることができれば幸いである。
奈良県不動産鑑定士協会・不動産鑑定士/田畑惣臣(たばた・ふさおみ)(株)田畑不動産鑑定士事務所






















