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スタンダード会員限定大震災の教訓を生かす 「首都直下型」 三井康壽・日本不動産学会会長に聞く 財よりも〝命〟失わない対策を

住宅新報 2015年1月27日 号 1面

総合
三井康壽・日本不動産学会会長

三井康壽・日本不動産学会会長

 首都直下型地震に対して、我々はどう備えればいいのか。95年に起きた阪神・淡路大震災では、神戸市だけで約4700人、大阪などを含めると全体で約6500人の方が亡くなった。神戸での検死結果を調べると8割が建物の崩壊による圧死であった。したがって、阪神・淡路大震災の教訓は、なによりも耐震性が重要ということになった。

公助+共助・自助

 震災は天災だから、昔から不可抗力と考えられてきた。しかし、だんだん科学技術が発達し、立派な堤防や放水路、ダムなどを造って被害を制御できるようになると、今度はその制御の仕方がまずかったのではないか、人災ではないかと言われるようになる。

 このように、公共でやらなければいけないという考えを公助論と言う。この公助論に加え、共助・自助論というのが出てきたのが阪神・淡路大震災だ。日本人は非常に共同意識が強い。誰かが苦しみに遭ったときは助け合う。この共助の精神こそ日本人の国民性だと思う。

復旧までの期間は

 以下は自助について述べよう。阪神・淡路大震災で、復旧までの期間は最大で電気が6日、電話が14日、ガスは84日、水道90日、下水道が93日だった。電気と電話は早い。ガス、水道、下水道は地下埋設管だから、どこで壊れているかを調べるのに時間がかかる。

 首都直下地震が起きたときにライフラインがどのくらいで復旧できるかというと、東京都の話では電力が6日、通信が14日で阪神・淡路と同じ。ガスは少し早めで53日。上水道、下水道は30日と阪神・淡路よりかなり早い。しかし、逆に言えば、最大この期間は我慢をしなければいけない。その間は自助や共助が必要になる。

 水がないと絶対に困る。阪神・淡路大震災のときは、給水車でやった。ところが、交通渋滞でぜんぜん行き着かない。そこで東京都は給水拠点方式に変えた。半径おおむね2キロぐらいのところに大きな給水所をつくっておいて、そこに被災者に取りに来てもらう。どこに給水拠点があるかを事前に調べておくことが大切。これも自助の備えだ。

 深刻なのがトイレの問題だが、私の意見は風呂の水を使うことだ。風呂の水は200リットルから300リットルぐらい。一杯にしておけばトイレの水を10回から15回は流すことができる。

震度5で止まる鉄道

 震度5の地震で鉄道は必ず止まるということを知っておきたい。東日本大震災でも震度5を記録したから、鉄道はすべて止まった。鉄道は安全確認をしないと絶対に運転再開しない。したがって時間がかかる。

 しかし、地下鉄は割と安全性が高く、目視の点検で済むので運転再開は早い。東日本大震災は午後2時46分に災害が起きたが、一番早く開通したのが都営地下鉄三田線と浅草線で午後8時半だった。地上のJRは、次の日の朝8時半だった。

 阪神・淡路大震災でJR山陽線が開通したのは地震から3カ月後の4月。阪神、阪急という私鉄は6カ月後だった。

 では、道路はどうか。大きな地震が起きると、主要幹線では、消防車や救急車など緊急自動車用に一般車両の通行を止める。ところが、通行止めには警察官の数がたくさん要る。これがうまくいくかどうか、やってみないと分からない。阪神・淡路大震災でも、大阪・姫路間のメーンの道路は交通止めにしたが、一般の車両がどこともなく出たり入ったりで、大変な渋滞になった。したがって、非常時に役立つのは自転車だ。

   ◇     ◇

 昔から「防災」と言ってきたが、10年くらい前からは「減災」、災害を少なくする努力をしようということが言われてきた。それに加え、やはり人の命が一番大事だから、私は人の命が亡くなることを少なくする「減悲」という考え方で、防災対策をすべきだと思う。災害で失うものは財産と人命が一番大きいが、財産は、あとからでもある程度は取り戻すことができる。

 しかし、人命はそうはいかない。悲しみをずっと残してしまう。「どうしてあのとき、おじいちゃん、おばあちゃんを助けてあげられなかったのか」「あの子どもをどうして助けてやれなかったのか」という悔いや悲しみを、ずっと引きずる。だから、命だけは落とさないようにする震災対策が一番大事だ。

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