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スタンダード会員限定紆余曲折の民法改正 意見募集で大幅修正、調整に遅れ 契約交渉不当破棄、明文化せず

住宅新報 2014年8月26日 号 1面

政策

 民法改正の中間試案に対しては、多くのパブリックコメントが寄せられ、194団体、個人469人という数に及んだ。

 中でも不動産業界をはじめ、多くの業界団体から、現行行われている実務面に多大な影響が出て、ひいては日本経済にも影響が及ぶとの声も多く、パブコメを受けた審議会では、試案の項目について明文化をしないという決定が多かった。

 不動産に関する改正項目のうち、本紙や不動産業界団体から疑問点が出ていたものを中心にまとめてみた(賃貸借、保証については6面参照。明文化された、あるいは試案通りのものは、検討中は、明文化されなかったものは×)。

●【契約に関する改正】

 (1)契約交渉の不当破棄×

 契約締結に向けて行われた交渉中に、当事者の一方が契約交渉を理由なく打ち切り、相手方に費用を発生させた場合の損害賠償責任について、これまで民法では規定はなかった。規定の明文化を検討したが反対意見が続出。具体的な規律を設けず、「契約を締結しようとする当事者は信義に従い誠実に交渉を行わなければならない」という規定を設けようとしたが、抽象的な規律で明文化に乏しいなどの意見が出て、明文化しなかった。

 (2)契約締結過程における情報提供義務

 相手方が締結前にその情報を知っていればその契約を締結しなかったなどの状況があった場合に、情報を提供しなかった側に損害賠償義務を設ける規定だが、これにも反対意見が出され、現在保留状態となっており、明文化されない可能性がある。

 (3)事情変更の法理×

 契約締結時に前提とされた事情がその後変化した場合に、一定の要件のもとに契約の解除を求めることができるとする規定。解除権に限定しても、規定を設けることについては裁判外で紛争が起きる可能性があるなどの意見が出て、明文化しなかった。

 (4)契約当事者の付随義務と保護義務×

 契約の当事者は、契約で明示されていない場合などであっても相手方が利益を得ることができるよう、契約の趣旨に照らして必要と認められる行為をしなければならない、とする規定。現行民法には規定はない。土壌汚染対策やインスペクションなどで適用されると、そもそものインフラが整わない状態では混乱を招きかねないとして、反対意見が出て、明文化しなかった。

●【売買に関する改正】

 (1)瑕疵担保責任

 売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合、そのために契約の目的を達せられないときは契約解除などができるという規定。不動産業者にとっては最も気になるだろう。中間試案では、瑕疵という用語をやめ、「契約の趣旨に適合した権利」としたが、趣旨では幅が広すぎるとして、「契約の内容に適合した権利」となったが、検討中となっている。

 (2)買主の権利の期間制限

 売主が契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、代金減額請求など行える期間制限。中間試案では、規定を廃止して消滅時効の一般原則による案と買主が不適合の事実を知った時から1年以内とする案が提示されていたが、後者の買主が不適合の事実を知った時から1年以内となった。

 (3)競売における買受人の特則の変更

 現行民法では、競売において物に隠れた瑕疵があっても、買受人は債務者または配当受領者に対する瑕疵担保責任を追及できない。中間試案では、売買と同様に契約内容に適合していないと債務者または配当受領者が責任を負うこととなった。この点については変更はない。

●【民法総則に関する改正】

 (1)錯誤

 錯誤について、中間試案では、動機の錯誤(意思表示の形成過程に勘違いがあった)を明文化し、これまで錯誤による意思表示は無効であったものを取り消すことができる行為とした。動機の錯誤の要件などに異論があり、現在、検討中となっている。

 (2)消滅時効

 現行の民法では、1年から3年の短期消滅時効について、細かく規定しているが、中間試案ではこれを削除し、債権者が権利を行使できることを知った時から5年、あるいは権利を行使できる時から10年間行使しないときとし、併せて商法522条を削除した(商行為によって生じた債権の消滅時効)。

●【その他】

 (1)危険負担

 債権者の責任でない事由による物件の滅失などに関する規定。中間試案で削除され、そのままとなっている。

 (2)暴利行為の規定の創設×

 相手方の知識不足など合理的な判断を困難とする事情を利用して当事者の一方に著しく過大な利益を得させるなどの行為は無効とするもの。現行民法には規定はないが、90条の公序良俗違反として対応してきた。

 審議会では、要件が限定的すぎる、解釈によっては緩やかすぎるなどの意見が出て、改正は見送られた。

 今回の民法改正では、契約の趣旨、内容といった文言が多く、当事者合意を重視した内容で、ルールが明確化されて良い面もある。ただ、趣旨や内容といった文言は曖昧なものでもあり、紛争などが多くなる懸念もある。また、実務面で行われているルールを無視して、法理論だけで構成した部分も当初あったため、適用するとかなりの混乱が生じただろう。それに比べると、改正部分の多くが現状のルールに戻されたといえる。

 一般法である民法の改正は、宅建業法をはじめ、多くの法律に関連し、その改正作業も膨大になる。不動産業界に関わる人すべてが、しっかりと理解し、混乱を招くことがないよう対応することが必要だ。

不動産に関する主な改正項目の状況

○=明文化あるいは試案通り、△=検討中、×=明文化されず

契約交渉の不当破棄=× 契約締結過程における情報提供義務= 事情変更の法理=× 契約当事者の付随義務と保護義務=× 瑕疵担保責任= 買主の権利の期間制限= 競売における買受人の特則の変更= 錯誤= 消滅時効= 危険負担= 暴利行為の規定の創設=× 個人根保証契約における債務の元本確定事由= 賃借人の修繕権=

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