「宅建士」誕生で業界に変化 資質向上、全体を底上げ 「3人に1人」議論、終止符か
住宅新報 2014年7月1日 号 1面
今回の名称変更により、法律に加えられた特に大きな項目が、「信用失墜行為の禁止」「知識及び能力の維持向上」「従業員の教育」。業界全体の資質向上を意識したものだ。
信用失墜行為の禁止と知識・能力の維持向上は宅地建物取引士に向けたもの、従業員の教育については、宅建士を含めたその他の従業員全員に向けられたものだ。
自民党宅地建物等対策議員連盟(宅建議連)と連携し、長年名称変更を要望してきた全国不動産政治連盟(全政連)の山田守会長は、「悲願が実現した。これからはしっかりとした対応が求められることになる」と気を引き締める。また、全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)の伊藤博会長も、「倫理規定や研修により、コンプライアンス意識の向上と専門的知識の習得に一層努める」と語る。
「『士』となることで、社会的リーダーとしての責を担うポジションにつくという自覚が生まれる。業界の資質向上のためにも好ましいことだ」と語るのは、全日本不動産協会の林直清理事長。同協会は、自民党内の新たな政治連盟「全日本不動産政策推進議員連盟」と連携を図り、名称変更への後押しに尽力した。
名称が「士」となれば、資格のイメージや周囲の評価は高まることになる。だからこそ、これまでとは違った事柄を業務に付加する必要も出てくる。その内容について様々な方面で議論されていたが、最終的な決着として落ち着いたのが、宅建士を含む従業員の教育の充実だ。業界全体の底上げにつながり、ひいてはそれが、一般消費者の利益にもつながる。
消費者向け不動産コンサル業務のさくら事務所・長嶋修会長は、「士になることは大賛成。ただ、中身もそれにふさわしくならなければならない。プロとしての継続的な勉強は欠かせないはず」と指摘する。現在、法定講習は「5年に1回、5時間」と定められているが、この内容をどうみるか。より効率的で効果的な学習方法はないのかといった議論が、今後出てくることが予想される。
試験の難易度は…
宅建試験そのものの難易度について、今後どうなるかは未知数だ。「士になるので、当然難易度は上がるだろう」といった声が聞かれているが、根拠は全くない。ネット上にも様々な憶測が飛び交っているようだが、情報に振り回されず冷静な対応が求められる。住宅新報社講師の氷見敏明氏は、「名称変更により、高い専門性を求められることになるだろう。それを意識した問題の出題はあるのではないか」と話す。
従業員に対する教育の充実については、業界団体を通じて各社へ働きかけられることが予想される。昨年から全宅連が実施している「キャリアパーソン制度」は、まさしく従業員向けの教育システム。更に、今年度中には難易度を上げた講習も実施予定だ。他団体に所属していても受講できることから、「業界全体のレベルアップに間違いなくつながる制度」(全宅連・伊藤会長)ととらえている。
国交省土地・建設産業局 毛利信二局長に聞く 各団体で倫理規定を
国土交通省は、住宅・不動産業従事者が担う重責のほか、今後の土地・住宅政策を推進する上で各人が果たすべき役割の重要性を関係団体などに説明し、「宅地建物取引士」の誕生をサポートしてきた。国交省土地・建設産業局の毛利信二局長に、今後の業界に対する期待を聞いた。
――「宅建士」への名称変更で期待することは。
「今回は単なる名称変更ではない。業務以外のことも含めた倫理規定が設けられ、宅建士自らの資質が上がることになる。そして、宅建士以外の従業員の教育をしっかりと行うべきことも規定された。業界のボトムアップにつながることだ」
――倫理規定の順守をどのように担保するか。
「倫理規定という言葉で思い浮かぶのは全米リアルター協会。彼らは独自に定めた倫理規定を誇りに感じている。日本でも、それぞれの団体における自主規制が良いと思う。会員企業だけでなく、その社員である宅建士にも規定が及ぶ形に変えてもらえればと思う」
――「士」になることで規制が厳しくなるのではといった声もある。
「名高い『士』となるからには、当然ながら周りの期待も高まる。その期待に応えるべく研鑽(さん)を積むのは当然だろう。そして、その宅建士がいる中で、しっかりと教育を受けたその他の従業員がどんどん増える。宅建士の割合を、現在の『5人に1人』から『3人に1人』にすべきといった議論は以前からあるが、今回の名称変更をはじめとした一連の取り組みにより、その議論は遠のいたと思う。従業員の底上げが図られるため、宅建士は5人に1人で十分だと考える」
――宅建士に期待することは。
「中古住宅市場を活性化し、厚みのある市場形成に向けて動いている今、宅建士の果たすべき役割は大きい。事業者間連携においてもキーとなるはずだ」





























