新住まいの「ことわざ」<210> 家を畳む 松岡英雄
住宅新報 2014年4月1日 号 14面
連載: 新住まいの「ことわざ」
今から50年前の春、夢と希望を抱いて、準急「東海3号」で故郷岐阜をあとにした。東海道新幹線はその年の10月、東京オリンピックに間に合わせて開通した。ちょうど日本経済は高度成長の只中だった。東京で頑張れば明るい未来が待っているように信じて疑わなかった。もっとも、人生そんなに甘くはなかったけれど。
そして、故郷は遠くなった。そのまま戻ることはなかった。故郷はいつしか、記憶の中だけに存在する町になっていった。
あとを継ぐ者がいなくなれば家は畳むしかない。故郷の実家も今はない。悲しいことではあるけれどそうせざるを得なかった。その跡は喫茶店の駐車場になっている。4年ほど前、たまたまクルマで通ったことがあったが、何ともせつない風景だった。実家のある人は幸せである。失ってそれがわかる。






















