ワンルーム投資が再燃 「新規層」も動き出す(つづき) 価格上昇圧力、増加へ 注目企業
住宅新報 2014年2月25日 号 19面
14年は証券業界でNISAの出現により新たな顧客の争奪戦が繰り広げられているが、マンション投資業界でも新規購入層がかなり増えると思われる。背景には税制改正による相続税の大幅なアップ、消費税、所得税、社会保険料などのアップによる、いわゆるタックスベネフィット(節税対策)層の台頭がある。また需要の面から見ると、アベノミクスによる経済政策の効果により企業収益が増大し、福利厚生としての住宅需要(社宅)の増加も見込まれマンション投資の安定性に寄与している。
依然として低金利は継続しており、消費税の増税に景気がそれほど影響を受けなければ今後もワンルームマンション市場は順調に推移するだろう。
原価アップの対処法
ただし、14年以降のマンション価格を考えてみると、今年は東北の復興需要、建築材料の値上げおよびオリンピック招致による需要増から建設費の大幅アップなどで、マンション価格のへの影響は大きいと考えられる。地価の上昇が都心部を中心に著しくなっているが、それらの値上げをそのままマンション価格に転嫁するわけにはいかない。
不動産業界として原価のコストアップとどのように向き合うのか。いくつかのシナリオを考えてみた。次の5点だ。
(1)1戸当たりの面積の縮小化
(2)構造体以外の設備仕様などのワンランクダウン
(3)人件費高騰の影響を避けるための工期の延長
(4)供給エリアの遠隔化
(5)利益率の圧縮
「NET3%」も出現か
米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、アメリカの量的緩和の縮小を堅持すると最近表明した。緩和を縮小してもアメリカ経済の成長に影響がないという自信の裏付けがあってのものと言えるのではないか。これによってドル高円安の状況もしばらく維持されるであろう。つまり輸入資材・燃料などの値上がりは更に進むと思われる。
原価の値上がりが続けば、最終的にはマンション価格上昇というシナリオへとつながる可能性は高い。一般的に新築マンションであれば表面利回りで4.5~5%、NETで4%前後、中古であれば表面利回りで6~7%(いずれも立地により異なる)であるが、今年は都心3区(千代田区・中央・港区)でNETで3%前後まで下がる、いわゆる「新価格マンション」の出現も十分に予想される。
日銀が目標とする2年で2%の物価上昇は現実的にはかなり難しいと考えられ、4月以降に追加の金融緩和をする可能性もある。するといち早く反応するのがリート(J|REIT)および不動産株であり、先行で上昇し、その先にもう一段地価、不動産価格の上昇が考えられるのではないか。
いつかは収斂へ
実需用のマンションと違って、投資の世界では3%台から8%、9%といった中で利回りは変動し、マンション価格、賃料などは収斂(れん)されていく。久々のミドルバブル状態なので止めどもなく価格が上昇するような思いになりがちだが、経済の中にはビルドインスタビライザー(経済の安定装置)が働くように、不動産市場にも同様の機能がもともと潜在している。
中古やリノベ物件に注目
新築マンション価格が上昇すると、売れ行きが鈍り供給が減少する可能性が高い。その隙間を埋めるのが「中古マンション」あるいは「リノベーションマンション」であると考えられる。大手ディベロッパーでは、三菱地所レジデンスがリノベーション事業に参画するとの報道があったことも耳に新しい。
現在、中古マンションの新規登録件数は大幅に減少しているのが現状だ。しかし、成約件数は増加しており、需給関係のギャップがある状態が続いている。価格面で言うと、東京23区における築5年以内の中古価格は新築とそれほど相違ない傾向にあるが、郊外に行けば行くほどその差は広がるようだ。新築マンション価格が上昇していけば、中古マンション価格も上昇するのではないだろうか。
デフレ時代にはとにかく安いもの、利回りが高いものに価値を置く考えも多かった。これからは、本格的なインフレ時代になった時に時代の波に取り残されない本当の好立地、ハイクオリティなものに対する見極めが、重要になると思われる。
供給主の眼力
今後オリンピックの関連事業としては、国としては首都圏の3環状道路建設など物流ネットワークの強化、次が羽田空港の滑走路延伸、首都圏鉄道の相互直通化、また東京都としては競技施設、選手村整備など目白押しである。また舛添新東京都知事は、東京オリンピックまでに老朽化した首都高速道路の補修を実施すると表明している。インフラ整備が進む状況で建築費に与える影響は、今後ますます大きくなっていく。
このように地価、建築費が上昇する中、供給主としても市場動向を見極める眼力がより求められることになる。顧客ニーズとマンション価格、建築費や工期などの調整手法がより問われることになるであろう。
活況を呈すセミナー
先ほども述べたように、私は三大都市圏などのマンション投資セミナーに招かれて講演させて頂いているが、毎回盛況で、東京のみならず大阪エリアのマンション投資市場も熱気をおびている。いずれも女性の参加者が多いのも特徴である。
セミナーでは、参加者の多くの〝生の声〟に接することができる。例えばある参加者からは「将来の管理コストが上がらないように、外壁や内装材に防護性の高い素材を使って、汚れにくいマンションを作って欲しい」とのリクエストがあった。
このようにセミナー会場は情報を発信するだけでなく、参加者からの情報を収集できる場でもある。その面では非常に意味のあるものだと考えられる。今後もセミナーなどを通じて供給側からだけでなく参加者からの意見・要望などの声も収集し、それらを含め広く発信していきたいと考えている。
【注目企業】 アーバネットコーポレーション
居住空間に〝こだわり〟 少数精鋭で品質を重視
アーバネットコーポレーションは、1997年7月に新宿区において、設計・不動産売買・賃貸及びその仲介を目的として設立した。設計事務所からスタートしたディベロッパーとして、機能性・効率性とデザイン・芸術性を融合させた「ものづくり」へのこだわりと、従業員は少数精鋭による「企業規模」へのこだわり、東京23区駅10分以内という「立地」へのこだわりを持って、投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売(卸売)という不動産開発ではニッチな分野を事業の中核に据えた独自性のある不動産開発を追求している。
徹底的なニーズ分析
同社が自社で行うのは、用地仕入・意匠設計・卸売のみ。実施設計は設計会社へ、建設はゼネコンに発注するというようにアウトソーシングを最大限に利用し、製販分離の徹底により、少ない従業員で多物件の同時展開を可能とした収益性の高い事業モデルが強みである。設計事務所からスタートした当社は、居住者ニーズを徹底的に分析するために、事業的には直接接触することがない自社開発マンション入居者(賃貸人)へ居住空間アンケートを実施し、居住空間の改良を続けている。このアンケート調査から、入居者の多くが収納スペースの不足やユニットバスなどに不満を持っていることが認識され、設計段階からの徹底的な見直しにより、デッドスペースでの収納スペースの確保や、一般的なユニットバスと床面積を変えないで足を伸ばせる美しい浴槽を自社開発している。また、自社開発マンションのエントランス部分には必ずオリジナルの彫刻を設置し、機能・効率化だけでなく文化面での充実も図り、他社との差別化を図っている。
設立から10年後の2007年にジャスダック証券取引所に上場するも、翌年発生したリーマンショックにより、同業上場会社の倒産が相次ぐ大変厳しい事業環境となった。同社は、棚卸資産の評価損失をいち早く計上するなどの施策を行うと共に保有物件の販売に邁進し、09年6月期1期のみの赤字決算で翌期には黒字回復を果たした。監査法人による「継続企業の疑義」を記載されることなくこのピンチを切りぬけ、この14年6月期まで順調に利益を積み上げてきた。これも同社の強みである、質の高い「ものづくり」と、東京23区での開発の徹底や少ない固定費での事業が、大きな要因であったと思われる。
リーマンショック後は、自社開発のファミリーマンションやコンパクトマンションの分譲も手掛けている。中核事業の投資用ワンルームマンションでは、年金不安などの背景から不動産投資が実物資産として見直されて、投資用ワンルームに対する消費者の関心は高く、販売は好調で在庫不足の状況が続いている。
























