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スタンダード会員限定相続が問うもの 親から引き継ぐべきは何か タクトコンサルティング会長 本郷尚氏に聞く

住宅新報 2013年12月17日 号 12面

総合
  • 本郷 尚氏

    1 / 2本郷 尚氏

  • 「こころの相続 ~幸せをつかむ45話~」

    2 / 2「こころの相続 ~幸せをつかむ45話~」

 相続が問題になるのは、普通は2次相続の時。父親が亡くなった時の1次相続では、妻に全財産を相続させてしまえば問題はない。妻には配偶者控除があって、よほどの資産家でないかぎり相続税はかからないからだ。母親が全財産を相続することに意義を唱えるような子供がいたら、育て方に問題があったと思うしかない(笑)。

 相続問題というと、すぐに〝節税対策〟が思い浮かぶが、より重要なことは、残された者がどう生きていくかという〝生存対策〟だ。普通は女性の方が長生きするから、父親は自分が亡き後どうしたら妻と子供たちが幸せに暮らせるかを考える。

 同じ親子でも母親と娘の関係は特別で、一番絆が強い。だから、母と娘が一緒に暮らす〝サザエさん〟スタイルが一番の理想となる。コンサルタントは、そうした人間関係の基本を知っていなければならない。

 節税対策は、一定の知識があれば提案できる。しかし、40年あまり資産コンサルティングをやってきて思うことは、『人間は頭で考え、心で動く』ということだ。だから、どんなに論理的に説明しても心が納得しなければ人は動かない。『こころの相続』を著した理由はそこにある。確かに銭勘定も大切だが、心の感情の方がより大切なのだ。

 『こころの相続』では、実際に相続に直面した家族が相続後にどのような人生を送ったかを45の人間ドラマに仕立てた。もちろん、フィクションに置き換えてはいるが、現実に起こった話だ。

 これを読んでもらうと分かるが、相続後に選んだ人生に正解・不正解はない。だからこそ、相続では一片たりとも揉めてはいけない。みんなが気持ち良く譲り合った結果なら、幸福な人生だったと納得できる。

 法律上は親が死ねば相続権が発生する。しかし相続は権利ではなく、親からの贈り物だ。特に1次相続は子供に権利などなく、母親が全財産を受け継いで当然なのだ。なぜなら、子供は育ててもらっただけで、財産形成に何も寄与していない。

 贈り物だと思えば、感謝の気持ちがわくから、奪い合おうとも思わない。争って奪い取ったお金は結局〝死に金〟となって生かされないが、感謝しながらもらったお金は、その後の人生に〝生き金〟となって幸福を招いてくれる。

 不思議なほどそうなる。譲り合うことができる兄弟は、親の生き方や考え方も受け継いでいるということだ。相続の本質は、家訓とまでは言わなくても、親の気持ちや心を受け継ぐということだ。親から受け継ぐものが金銭しかないとしたら、寂し過ぎる。

 最近は、子供が1人しかいないケースも多い。兄弟間の争いが無いのはいいが、結果としてもっと悲惨なことにもなりかねない。自分が生涯稼ぐ賃金の何十倍もの財産を、すべて自分がもらえると分かったら人間はどうなるか。人生を踏み外してしまう生々しい現実も見てきた。

 現代社会における相続は、相続税が掛かるか掛からないか、いくら掛かるか、どうしたら節税できるかという問題以上に、家族とは何か、より良く生きるとは何かを、我々に問い掛けている。

ほんごう・たかし=

税理士。最初に勤めた個人会計事務所で大きな相続を手掛けその大切さを痛感。75年、本郷会計事務所を開業。83年に資産税に特化した(株)タクトコンサルティング設立。03年税理士法人タクトコンサルティング設立。執筆・講演でも活躍中。

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