新住まいの「ことわざ」 <178> 蚊帳の中に居れば落雷せぬ 松岡英雄
住宅新報 2013年8月13日 号 14面
昔の家には衣桁(いこう)があった。衣桁とは、広辞苑によれば「着物などをかけて置く家具。形は鳥居に似る。衝立(ついたて)式のものと、真中から蝶番(ちょうつがい)で畳むしかけのもの(衣桁屏風)とがある」とある。今の、パイプ製ハンガー掛けである。衣紋掛(えもんかけ)は着物用のハンガーである。これらの道具は現代の家からほとんど姿を消してしまった。和箪笥もなくなりつつある。桐の箪笥を洗って子子孫孫使っていく習慣がなくなっていくのはちょっと寂しい。
一張羅(いっちょうら)という言葉も最近は使われなくなった。持っている着物の中で一番上等のもの、あるいは1枚しか持っていない着物のことである。
夏になると蚊帳を吊って寝た。蚊取線香もあったが、蚊の攻撃から身を守るには蚊帳のほうが確実だった。子供の頃、夏の夜の蚊帳の中には自分だけの小宇宙が広がっているような気がしてなんとなく浮き浮きした記憶がある。それに、雷が鳴っても安全だと教えられていて、雷を怖いと思うことはなかった。その蚊帳も、クーラーや網戸の普及にともなって次第に使われなくなってしまった。






















