【解説】 地価公示 実体経済の回復急げ
住宅新報 2013年3月26日 号 2面
「地価は依然として下落しているが、下落率の縮小も続いていて、個別の地価上昇地点は増大している」というのが、ここ数年の公示地価のトレンドだ。
こうした、下落幅の縮小という傾向が、全体的には今後も数年続くと見られる。なぜなら、地価が全般的に上昇するとしたら、それは日本経済の景気が良くなり、デフレからの脱却が実現したときだからである。
日本経済の回復には、雇用が拡大し、賃金が上昇し、消費が増大しなければならないが、そのためには国民の期待が高い〝アベノミクス〟がうまくいったとしても、あと2~3年はかかるのではないか。
日銀の黒田東彦総裁は、3月21日に開いた初の記者会見で、2%のインフレターゲット達成期限について、2年程度を念頭に置いていることを明らかにした。しかし、デフレから脱却しインフレを起こせば景気が良くなるという、政府や日銀の考え方は(アベノミクス3本の矢の一つとしても)、どう考えてもおかしい。常識的に考えれば、景気が良くなるとインフレになりやすいのであり、その逆ではない。
不動産協会理事長の木村惠司三菱地所会長も「金融政策だけでインフレ率2%が達成できるとは考えにくい」との見方を示す。もし、アベノミクスのもう一つの矢である<成長戦略>が効果をあげないうちに、金融政策だけで無理矢理インフレを起こそうとすれば、だぶついたマネーが株や不動産だけに向かう資産インフレを誘発しかねない。
現に、今回の地価公示には反映されていない、今年に入ってからの不動産市場の動きを見ると、その予兆が現れている。投資用ワンルーム市場では中古価格が急上昇し、新築との価格差が縮小。それがしばらく停滞していた新築ワンルーム市場を活気付けている。通常の分譲マンションでも、東京都心では超高額物件が、国内の富裕層や台湾などからの投資マネーで動き始めているようだ。
投資家は、将来インフレが起きると思えば投資をする。まして円安が進めば、海外投資家は日本の資産が買いやすくなる。東京湾岸部のタワーマンション人気も回復し始めていると聞くが、投資マネーの流入による不動産バブルの発生が心配だ。それが一等地などに限られた局地的現象であったとしても、日銀のなりふりかまわぬ金融緩和が続けば、周辺地域へ波及する可能性は高い。
それでなくても、若年世代は所得減少下での消費増税で、住宅取得能力が低下する恐れがある。前出の木村不動産協会理事長も「内需拡大など成長戦略の推進が極めて重要」と指摘する。やはり、金融政策よりも、実体経済の回復を急ぐべきである。 (本多 信博)


























