天井から目薬 松岡英雄新住まいの「ことわざ」 <150>
住宅新報 2013年1月22日 号 12面
連載: 新住まいの「ことわざ」
母の実家は三重県の多度町にあった。小さい頃、5月の連休に多度大社で行われる、武者姿の若者が手綱をとる馬が急坂を駆け上がる「上げ馬神事」を何度か見に行った。岐阜市に住んでいた私たちは大垣駅まで東海道線で行き、そこから近鉄養老線に乗り換えた。多度駅までは約1時間ほどだった。途中、何カ所かトンネルがあった。なぜか、トンネルが好きだった。暗がりから明るい世界に出る瞬間に惹かれていたのかもしれない。
昨年12月、中央自動車道の笹子トンネルで痛ましい事故が発生した。まさかコンクリート板が百メートル以上にわたって落下してくるなどとは車に乗っている人たちは予想だにしない。これは人災である。管理責任は大きく重い。危険なトンネルがたくさんあるという。すぐに手を打たないといけない。事故の再発を防がないといけない。9人もの犠牲を無駄にしてはならない。
「2階から目薬をさす」とも言う。思うようにならずもどかしい、また、まわり遠くて効果がないことのたとえ。
目視の検査を行っていたという。コンクリートにクラックが発生していたらそこを補修補強するのだろう。打音の検査をすればボルトの弛みが分かるという。ところが、その検査は省略されていた。4.7キロもあるトンネル内で不良箇所を発見することが簡単にできるとは思われない。その検査を3日間で済ませていた。まさに、天井から目薬である。 (エッセイスト)






















