半畳(はんじょう)を入れる 新住まいの「ことわざ」<149> 松岡英雄
住宅新報 2013年1月15日 号 14面
連載: 新住まいの「ことわざ」
昨年暮れに亡くなった中村勘三郎さんは、客席からの「待ってました」という掛け声に「待っててくれてありがとう」と舞台からアドリブを返すような、歌舞伎俳優にしては珍しく茶目っ気のある人で、そういう人柄が多くのファンから慕われていたに違いない。
新しい歌舞伎座は今年4月に柿(こけら)落しが行われるが、その舞台に勘三郎さんがいないのはやっぱり寂しい。
昨年8月、公演の最中に市川染五郎さんが誤って舞台のセリから3メートル下の奈落に転落した時、事故の現場を見た父の松本幸四郎さんは、最悪の事態を覚悟したという。それが右側頭部の打撲と手首の骨折程度で済んだのは運が良かったとしか言いようがない。この強運を活かしてもらいたい。
学芸会の出し物は「花咲爺さん」や「桃太郎」だったが、主役は頭が良くて可愛かったヨシハル君にいつも決まっていて、子供心にちょっと羨ましく妬ましかった。私はといえば、退治される赤鬼だった。
『半畳を入れる』とは、芝居で、役者に不満や反感を持ったお客が、敷いていた半畳を舞台に投げ入れたところから、他人の言動を非難したり、野次ったり、茶化したりすることをいう。「半畳」は、芝居小屋などで見物人に貸し出した一人分の小さな畳または「ござ」のこと。『半畳を打つ』ともいう。
昔の芝居ファンはそれだけ芸に対して厳しかったということである。
(エッセイスト)






















