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プレミアム会員限定早川和男の「居住福祉」対談(中) 門前町(巣鴨)と居住福祉空間 東京・巣鴨地蔵通り商店街振興組合理事長木崎茂雄氏に聞く イベント企画 お寺の行事と一体で 全体をコミュニティ空間に

住宅新報 2012年9月18日 号 14面

連載: 早川和男の「居住福祉」対談

総合

長持ちの要因は

 早川 木崎さんたち商店街の方は、高岩寺や眞性寺などのお寺とどう関わって店を経営されているのですか。

 木崎 お寺の行事には我々が参画して、すべて企画運営もさせてもらいます。新年の祈祷会だとか、2月の節分だとか、4月の花まつり…。7月は地蔵会で4萬6千日もありますし…。5年前から巣鴨でも7月の2、3、4日は「朝顔まつり」を始めました。巣鴨の場合、お寺と商店街と地域が一体となってまちをつくってきたから、よそと違う門前町の独特な形ができ上がったと思います。中高年の皆さんがホッとする空間というのがいいのではないですか。

 いろんな専門家が、「理事長、ケーブルを埋設してきれいなまちにしたらどうだ」といいますが、「冗談じゃない、東京だから電信柱と電線が大切なんだ」と言ってやります。銀座通りでも日本橋でも、きれいな街並みだけど、ホッとする安心感とか温かみがない。電信柱でやたらケーブルが上にあって生活感がにおう。そこに鳥がとまったり、夕焼けがあったら「何となくいいな」と。これが地蔵通りが長持ちしている原因ではないかと思います。

 早川 私は以前、学生を連れてここに来たことがあります。学生が中年の女性にインタビューをしたら、「埼玉から毎日来ている。デイサービスに行ったら週2回でお金も要るし、ここは毎日無料で来ることができる」と言われたそうです。この商店街を、日本居住福祉学会では「デイサービスストリート」、居住福祉空間になっているというので表彰させていただきました。

 木崎 私たちは別にそう考えているわけではなくても、多分そうなっているのでしょうね。街並みだとか、お店のしつらえ方もそうですね。足早に歩く日本人ですが、巣鴨に来ると急に足がゆっくり、そぞろ歩きに変わる。だから滞留時間が長くなる。

 早川 現在の店舗数は190店舗くらいですか。トイレを使わせてもらえる店はどれくらいありますか。

中高年の居場所

 木崎 1階にトイレがある店のうち、大体60%ぐらいは貸してもらえます。ただ、お客さんによっては貸さないときもあります。怪しい人だとか、礼儀の悪い人には貸さないようになっていますし、利用する時は一応断ってもらう必要がありますね。

 早川 年を取るとトイレが近くなるし、しかも何万と来たら大変ですよね。

 ところで、佐々木さんはマンション管理会社の副社長ですが、看護師さんを雇って一種のケアといいますか、そんなサービス業務にもかかわっておられます。高岩寺の「洗い観音」の話を含め、この商店街は1つのケア空間ですね。

 佐々木 商店街のチラシに、「中高年は自分の居場所であるコミュニティ、共同社会、地域社会を求めている」と書いてあります。私たちはマンションの管理業務の中で何かイベントをやろうと、餅つき大会やガーデニングをと働きかけているのですが、高齢者はなかなか出てきてくれない。だから、居場所が自分の家だけになってしまって、具合が悪くても誰にも声をかけられないという状態があります。

 ですから、看護師を採用して、マンションの管理員室、管理事務所というのがありますが、そこに立ってもらう。高齢の人に声をかけ、「コミュニティの中に入りましょう、ひとりぼっちはやめましょう、居場所がこっちにありますよ」という、呼びかけ、働きかけをやり始めたのです。

 先ほど商店街を歩いていたら、「お久しぶり」と、家族同士があいさつをしていました。そこには高齢者も50歳前後の人もいて、コミュニティがあると思いました。福祉という意味では、私たちのような仕事も必要なのだと、その光景を見て思い直しました。

 早川 この商店街全体がコミュニティ空間のような感じととらえていいのですか。

 木崎 それは私たちがいつも考えていることです。商店街の責務というのは、外から来た人も地域に住んでいる人も、用がなくても、買物をしなくても、遠回りしてでも通りたいという商店街をつくらないと地域コミュニティの核になれない。商店街を通ることで、「笑顔もらった」「元気をもらった」「情報をもらった」「人とあいさつができた」「無駄話ができた」。これが商店街なのですよ。こうなると、皆さんが出やすい。

 早川 松江市の天神町商店街の方がこちらに勉強に来たといっていました。そうした見学対応も一生懸命やっているのですね。

松江・天神町の事例

 木崎 行政の人やマスコミ、メディアもたくさん来ました。あちらは地域に菅原神社があるので、菅原道真の子供の頃の石像をつくって、「頭をなでるとボケ封じ」になるというご利益までつくってしまった。それでシャッター通りのお店が開いてきた。縁日も月3回つくったと聞いています。

 早川 天神町周辺には一人暮らし老人が多いのですが、大きな空き店舗を改造して年寄りが自由に入っていける施設をつくった。バス停も真ん前にある。お茶屋さんが「巣鴨のおかげだ」と盛んに言っていました。

 佐々木 私は実家が真言宗の寺です。山寺なので前には商店街はないのですが、イベントが年に何回かあると地域の人が集まってきます。そこにコミュニティができて、飲んで騒いで、となります。お寺の行事と商店街のイベントを結びつけて、活性化しようとされているわけですか。

 木崎 そうです。主だったイベントが30近くあるほか、突発的な行事もたくさんあり、年間で40ぐらい行っているのではないですかね。だから巣鴨に行ったら、何かやっていた、楽しかった、面白かったから、また行ってみようか、となる。

 イベントは集客や販売促進のためではなく、「皆さんが楽しんでくれたら、それでいい」と。これが地域に定着する要因だと思います。時間はかかりますが、継続しないと無理ですね。   (続く)

 

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