国交省 住宅価格動向で指標 全国をカバー 国際指針に準拠 試験運用開始へ
住宅新報 2012年8月28日 号 1面

価格指数作成フロー
国土交通省は8月29日、住宅をはじめとする不動産価格の変動状況を月次で指数化した不動産価格指数の試験運用を開始する。更地や建物付き土地、マンション、また、それらを総合した価格変動(住宅総合)について、全国や地域別ごとに国際指針に基づき指数化。国土交通省のホームページ内で、毎月公表する。指数の構築は、7月に閣議決定した日本再生戦略にも盛り込まれたもの。市場動向の適切な把握による財政・金融政策への寄与や国内外の投資家による投資活性化などの効果が期待される。
価格指数構築の背景には、07年のサブプライムローン問題を発端にした世界的な金融危機がある。不動産価格の変動に関する情報が不十分だったことが、長期経済停滞を招いた要因の1つとされており、不動産価格の動向把握が国際的に重要視されている。09年には、国際通貨基金(IMF)などがG20諸国に指数の公表を要請。また、11年5月には、IMFや欧州委員会統計局(Eurostat)を中心に、住宅版指数に関する国際指針が作られた。
こうした国際動向を踏まえ、国交省は10年度に専門の研究会を発足。有識者や日本銀行、金融庁、法務省、内閣府などが参加して、国際指針に準拠した国際比較可能な指数について、11年度末まで検討を進めていた。
取引価格情報を活用
公表する指数は、国交省が四半期ごとに公表している不動産取引価格情報を用いて作成する。法務省に届く登記情報を基に、不動産の買主にアンケートを依頼して集めるもので、年間約30万件を収集している。この情報から、立地など物件ごとの個別特性が価格に与える影響を除去して、市場の変動による価格の変化のみを抽出する計算方法(ヘドニック法)で指数を割り出す。
指数は08年4月が始点。08年度1年間の平均値を100として指数化する。原則、毎月初旬に5カ月前の指数を公表する。例えば10月初旬には、5月分の指数を開示する(例外的に初回は、8月29日に4月分を公表)。また、四半期ごとに不動産鑑定士による現地調査を踏まえた確報も公表する。
公表エリアは全国ほか、ブロック別(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州・沖縄)、都市圏別(南関東、名古屋、京阪神)で行う。
タイムラグ短縮へ
試験運用期間は2年が目安だ。この間に指数の運用体制などの改善策を講じつつ、14年度からの本格運用を目指している。
本格運用開始へは、既に課題も指摘されている。取引時点から指数公表に至るまでにかかる約5カ月のタイムラグだ。買主へのアンケートがネックで速報性に問題が残る。
財政・金融政策や個人の取引で参考指標にするにしても、よりタイムリーな情報が求められる。また、国交省の調査によると、国際指針に基づき新たな指数を作成、公表しているドイツや12年夏に公表を開始する予定のイタリアなどの欧州各国でもタイムラグは、3カ月以内。主要国の多くでは、登記などの行政手続き時に価格情報が入手可能なため、早期の指数作成が可能だという。
このため国交省では、登記から指数化までの時間を短縮するための新たな情報取得手法を模索中。具体的な制度改善に向けた費用について、13年度予算への要求を検討している。
試験配信開始から1年半 東証住宅価格指数 国交省版と「互いに補完」
「配信のタイミングや使うデータ、算出方法などが異なる。使う人によってメリット、デメリットが出てくる。お互いに補完し合えるのではないか」
11年4月に住宅価格指数の試験配信を開始した東京証券取引所(東証)。国土交通省主体の指数配信が始まることに伴う役割の変化を問うと、上場推進部の横田雅之課長はこう答える。
東証住宅価格指数は、東日本不動産流通機構が持つ中古マンションの成約価格情報から首都圏の価格変動について指数化。米国の経済指標として世界的に認知されているケース・シラー住宅価格指数に倣い、同一物件の価格変化を基にした手法(リピート・セールス法)で算出している。タイムラグは2カ月だ。国交省指数とは異なるアプローチで作成していることなどから、「複数の指数が出るのは良いこと」(横田課長)と話している。
試験配信から1年半近くが経過した現在の認知度状況はどうか。横田課長は、「機関投資家の特にリサーチ部門の方には快く感じていただいている」と説明する。一方、個人投資家レベルへの広がりという観点では、まだまだの模様だ。東証によると、指数公表ページのアクセス数の月平均は、配信開始当初の3カ月が約2950件に対して、直近3カ月(5~7月)は約3250件。大きく伸びているとは言えない。この点、「個人の投資家などに注目されるのは価格が大きく動いた時期などになると思う。今は専門家の方に理解を深めていただいている段階。そういった方に根付かせられればおのずと広がっていくのではないか」(横田課長)という。
また、同指数は最長3年程度の試験で市場への悪影響などが生じなければ、本配信に移行する見通し。本配信後は、金融商品としての活用を視野に入れている。「指数の売買は不動産を保有される方のリスクヘッジになる。リスクヘッジ手段が得られれば、不動産投資をする人が増え、業界の方にもプラス影響を感じてもらえるのではないか」(横田課長)と話している。
流動性リスクで新指数 国交省検討
国土交通省は、不動産取引市場の透明性を更に向上させる新たな指数の作成も視野に入れている。月ごとに一定エリアでどのくらいの数の取引が行われたかを示す流動性リスクの指数だ。年間約100万件の登記情報を基に作成できないか、価格指数の改善と併せて検討を進める考えだ。
流動性リスクの指数は、金融機関が不動産の担保価値を判断する際の指標としての活用などが期待される。6月に中古流通市場活性化に向けた提言を取りまとめた国交省の有識者会議(不動産流通市場活性化フォーラム)では、みずほコーポレート銀行証券部長の住田直伸委員が、住宅ローンの貸し出しについて、担保物件の評価に重点を置いた形で進めるならば、「返済が滞ったときに担保物件を即時処分できることが大事になる」と、流動性の高さがポイントになることを指摘している。






















