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スタンダード会員限定地盤対応が急務に

住宅新報 2011年9月20日 号 1面

政策

売買仲介市場も苦慮

 地盤や地形に起因する震災リスクへの関心は、売買仲介時の対応にも変化をもたらしている。

 売買仲介店舗「三井のリハウス」を全国展開する三井不動産販売(東京都新宿区)は震災後、液状化や津波などのハザードマップを作成している自治体に所在する物件について、それらの被害が想定される場合は重要事項説明に記載する方針を打ち出した。災害に対する意識の高まりを受け、いわゆる「ネガティブ情報」の開示を徹底する。

 同社ではこれまでも各店舗に、積極的な情報開示を促してきた。三井のリハウス板橋サンシティ店(東京都板橋区)では、河川が氾濫した際に浸水が予想される地域については重要事項説明で必ず説明し、ハザードマップも添付。更に、区に問い合わせて過去に周辺で水害があったかどうかを調べ、売主や近隣住民にもヒアリングを行う。買主に安心感を訴求することが目的だが、「購入前に知り得る情報をすべて提供することで、後のトラブルを抑止する効果がある」と井村優喜課長代理。情報は物件選びの時点で提供するため、契約の段になって影響が及んだことはないという。

 宅地建物取引業法の第35条で定められている重要事項説明に、取引物件の地盤や地形に関する情報の提供は規定されていない。仲介業者が重説で地盤関連の項目を説明する時は、買主の購入動機に影響するものでそれを仲介業者が知っている場合にのみ告知を義務とする、第47条第1号の「その他の重要な事項」の扱いである。

 違反すれば業務停止処分に加えて罰則規定も設けられているが、説明の必須項目が明示されている35条に対し、案件ごとに事情が異なるとされる47条第1号は、やや曖昧な位置付けだ。

 今後、35条が定める重要事項に地盤関連の項目が加わる可能性はあるのだろうか。国土交通省に聞くと、現時点で明確な方針はないという。

 また、不動産適正取引推進機構の村川隆生上席主任研究員は、「(35条に)『地盤調査の記録の有無』はあってもいい」としつつ、「情報を集め開示する姿勢は、顧客の信頼にもつながる。熱心でない業者との差別化になるはずだ」と、『義務ではないからこそのメリット』を指摘。同時に、「『告知書』を活用すれば、地盤関連の説明の大半は網羅できる」と話し、その重要性を強調する。 (4面に関連)

土地の価値に大きく影響

 地盤や液状化への関心が高まる中、「土地の性能をもっと開示すべきだ」と主張するのが地盤の調査・改良などを全国で手掛けるサムシングホールディングス(東京都中央区)の前俊守社長だ。中でも土壌汚染、地耐力、液状化、地中障害物は、土地の安全性や不動産の価値を大きく左右するため、住宅・不動産業界は率先してこの4項目の情報開示に取り組んでもらいたいと話す。そのため同社でも現在、住宅・不動産会社が「土地の性能」を顧客に提示しやすい手法の確立に全力を注いでいる。

 前社長は、「液状化被害により、地盤に対する関心は全体的に高まった。しかし、実際に被害に見舞われた地域とそうでない地域とでは温度差がある。5万円程度で行うことができる戸建て住宅の地盤調査に比べて、液状化の調査や対策は大幅にコストが跳ね上がることもあって、調査したい気持ちはあっても断念している一般消費者も多い」とみている。

 今回の地震で液状化が生じたのは、主に液状化対策を行っていなかった地域が多かったといわれている。このため住宅会社の間でも大型住宅団地の開発に際しては液状化の調査の徹底や、必要に応じた液状化対策を検討する動きも目立ってきた(前社長)ところだ。

 ただ一般的には、危険度の高い広範囲な地域に対策を施さなければならないことや、更地状態での施工などの条件が伴うことが大きなハードル。既存住宅地では、液状化対策は進みづらいとも前社長は指摘する。

施工実績が約2倍に ハイアスアンドカンパニー

 ハイアス・アンド・カンパニーが施工代理店を通じて展開している地盤改良工法「ハイスピード工法」が順調だ。

 3月~8月までの半年間の施工実績(総施工メートル数)は、前年同期比1.8倍に伸びた。8月からは、液状化に特化したサービス対応も始めた。

 「ハイスピード工法」は、ドリルで地盤を掘削し、そこに天然砕石を投入。締め固めながら地表まで砕石杭を構築するもの。砕石の隙間に水が浸透し、土中の水圧上昇が抑えられるため、液状化現象の影響を抑える手法として設計事務所や住宅会社からの問い合わせが増えているという。

 そこで同社では、8月から液状化に特化した施工手法の提供を始めた。基礎の周囲に厚さ30センチ以上の砕石からなる浸透層を敷くことで、砕石から上がってきた水を逃がすことができる。 

 建物基礎の下に加え、周辺にも通常より長めの砕石パイルを施工し、かつ基礎と砕石パイルの間に砕石を敷く手法と、より簡易的な対処法として、基礎の下と建物周囲に砕石を敷く手法の2つがある。

対策をマニュアル化 大京、マンション用地で

 マンション各社とも、独自の地盤調査や液状化対策を施しているが、その内容をマニュアル化したのが大京だ。7月に策定し、「災害に強いマンションとして、設計基準・対策基準を強化するためにマニュアル化した」と同社では説明している。

 内容は、(1)「液状化危険予測図」によるマンション用地の危険度確認、(2)「(1)」で危険度を確認した場合、土質柱状図による実際の地盤確認、(3)「(2)」で「液状化対策が必要」と判断した場合、「対策レベル1.」から「対策レベル3.」の3段階で独自の液状化対策を施す――といった流れだ。(2)では、液状化が発生しやすい地層が地表から20メートル以内の深さで地下水位以深にあるかどうか、水で飽和していないかどうか、地盤の強さを測るN値が15以下かどうかなどを調査する。

 (3)の対策では、これまで実施していた作業のほかに、「道路側と敷地側の配管結合部を、地震の揺れに追従するフレキシブルジョイントにする作業」「敷地内配管を建物に緊結させ、建物と同じ揺れの動きとすることで管の破裂を防ぐ作業」などを新たに追加している。

性能表示で情報提供 国交省が検討

 国土交通省は、地盤の液状化に関わる情報について、住宅取得者に提供することを重要視している。その手段として検討を進めているのが、第三者が住宅性能を評価する住宅性能表示制度の活用だ。

 住宅性能表示制度の新項目とすることや、既存の項目を評価する際の要素として盛り込むことなどを検討している。

 国交省は住宅性能表示制度での情報提供に向け、このほど基礎的なデータや技術的知見など基礎資料の作成を行う民間事業者を公募。(株)東京ソイルリサーチに決定した。

 同社は、液状化予測手法の妥当性や液状化に関する情報を表示する際に有効な内容などを検討。11年度内をメドに報告書を取りまとめる。

 国交省はこれを受け、具体的な制度確立を目指す考えだ。

 住宅性能表示制度は、外見や簡単な間取りからは分かりにくい住宅の性能を等級や数値で表示するもの。現在、構造の安定のほか、火災時の安全、劣化の軽減、高齢者への配慮、防犯対策など10分野を評価している。

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