空き家「大量発生前夜」 高齢化の郊外団地で 防災・防犯、景観に悪影響
住宅新報 2012年6月5日 号 1面

(東京都内で)
20年前の約2倍に
5年に1回行われる総務省の土地・住宅統計調査。08年版が最新だが、その調査で全住宅ストック(約5760万戸)のうち、空き家総数は757万戸で、構成比は最高の13.1%まで増加したことが分かった。5年前(659万戸)に比べ97万戸増え、空き家総数は20年前(394万戸)の約2倍まで膨らんだ。
内訳は「賃貸用または売却用の住宅」が448万戸、「その他の住宅」が268万戸、別荘などの「二次的住宅」が41万戸だった。この中で増加率が著しいのが「その他の住宅」。
例えば、転勤・入院などの理由で居住世帯が長期不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊す予定の住宅などで、都市部で目立ち始めた相続の清算途上の住宅も含まれる。最も多い「賃貸用または売却用の住宅」は5年前より50万戸増加。このうち「賃貸用の住宅」は413万戸で、こちらは空室率の上昇という形で賃貸住宅市況を圧迫する要因になっている。
都道府県別の空き家率は、山梨県が20.3%で最も高く、逆に最も低かったのは沖縄県の10.3%だった。別荘の多い地域や西日本の地方部で高く、首都圏や名古屋圏で低いという結果だった。
空き家動向は、人口や世帯数とも密接に関係する。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、我が国の人口は10年の1億2805万人、世帯数は15年の5060万世帯をピークに減少に転じる見込みだ。首都圏などで特に問題になってくるのが郊外住宅団地での高齢化の進行だ。
国交省の伊藤明子・住宅総合整備課長は、大都市郊外部について「空き家の大量発生前夜」と警戒する。
例えば、埼玉県鳩山町の鳩山ニュータウンは71年から事業を開始し、97年に分譲を完了した。人口は95年時点で1万436人(3033世帯)だったが、50年後は3018人(1399世帯)まで減少すると見られている(国交省データ、国勢調査から推計)。65歳以上の高齢化率は05年で18.4%だったが、その20年後には52.8%になるとの推計値もある。
ここに限らず、高度成長期から大量の流入人口の受け皿となった郊外ニュータウンや大規模団地は、いずれも高齢化の進展と共に空き家が増加。今後急増する可能性が懸念されるのだ。
所有者不明で有効利用妨げ
では、空き家はなぜ問題になるのか。「空家実態調査」を手掛けた日本住宅総合センター研究部の行武憲史氏は、周辺に迷惑をかける「外部性の発生」と所有者不明による「土地の最適利用の妨げ」を指摘する。外部性の発生とは、防災性・防犯性の低下、倒壊・崩壊の危険、衛生状況の悪化である。
国交省資料では、現に空き家問題が発生している地域は、豪雪地帯・過疎地域、郊外住宅団地、密集市街地・中心市街地という。空き家発生に伴う課題としては、行武氏の指摘する内容のほかに、風景・景観の悪化、市街地の空洞化・集落の崩壊といった懸念材料も加わる。具体的な対応としては、「除却」「管理の適正化」「活用」が挙げられるが、どう進めるか対応が難しいのが実情だ。
対策遅れる自治体
国交省が11年3月に実施した「地方公共団体の空き家対策等に関するアンケート調査」によると、空き家に関する問題があると考えている地方公共団体は約4分の3(1244)に上るが、具体的な対策の取り組みを実施しているところは3割に満たない(499)。
実施している内容も「空き家情報の提供」(489)、「相談体制の整備」(393)、「改修後地域資源として活用」(194)、「空き家の除去」(181)などの順で多く、取り組みはまだ緒に付いたばかりだ。
また、4月1日時点で空き家等の適正管理に関する条例を施行している地方公共団体は54(岩手、宮城、福島県内133市町村を除く)にとどまっている。
だが、首都直下地震や東海、東南海、南海の大地震も予想される中、災害などを増幅させる恐れのある空き家をどうするかという問題への対応は切迫したテーマでもある。このため、この3月には総務省、国交省、環境省、警察庁、消防庁による空き家関係省庁連絡会議も発足。当面の措置として、ホームページによる周知、地方公共団体に対する説明会の開催などを順次実施する体制を整えた。今のところ豪雪による空き家の倒壊など、地方での問題がクローズアップされがちだが、今後は都市部で深刻化する問題であるとの認識が必要だ。






















