宅地建物取引士(キムラ)
連載: 読者コラム
新築マンションのモデルルームに訪れたお客様に、「いらっしゃいませ!まずはこのアンケートにご記入ください」というお決まりのセリフでお客様を迎え、内心震えながら先輩に教えられたことを自分なりの言葉で説明をしたことを今でも覚えています。初めて一人で接客させて頂いたそのお客様が、接客から申込み、契約同席まで初めて一人で担当させて頂いたお客様になりました。
未経験で飛び込んだ不動産業界。私はマンションディベロッパーで新築マンションの営業マンとして業界デビューをしましたが、躯体構造、設備仕様のハード面のことに明るくないのはもちろんのことながら、支払い希望金額からの予算を算出する方法等々、分からないことばかりでした。
初めて配属された物件で、住宅ローン実務や予算の概算方法を少しずつ教えてもらったり、勉強したり、接客も先輩に同行してもらってサポートしてもらったりするうちに次第に知識、経験が増えていきました。当然、勉強すべきことは日々あり、自ら調べたり、分からないところは設計担当者や先輩営業マンに確認したりすることは怠りませんでした。その甲斐もあったのでしょうか、物件に恵まれたことも大いに影響していると思いますが、1年ほどで販売件数トップになりました。お客様から感謝のお手紙を頂いたこともあります。
不動産業界に入る前、不動産鑑定事務所のアシスタントをしていたこともありましたが、不動産営業に役立つ知識を得られたわけではありませんでした。アシスタント時代、宅地建物取引主任者の勉強でもしようかとテキストは購入しましたが、積読(つんどく)で終わっていたような状況でしたし、販売件数トップの時も、感謝のお手紙を頂いたときも、宅地建物取引主任者ではありませんでした。
確かに、不動産営業に携わるものとして、宅地建物取引主任者レベルの知識を有している方が望ましいことは言うまでもありません。資格を取得している方がさらに望ましいことは、分かっています。
しかし、不動産業界の社会的ステータスを上げるために、宅地建物取引主任者の資格名称を「宅地建物取引士」に変えるという動きがあるという業界の動きには少し首をかしげます。宅地建物取引主任者から「士業」に生まれ変わることにより、社会的ステータスが上がるものでしょうか?そしてお客様にメリットが生じるのでしょうか?
「掘り出し物件」「未公開物件」という言葉に象徴される既存不動産の流通における情報の不透明さ、ややもすれば手数料や歩合給の獲得が優先され、顧客利益を後回しにしてしまいがちになる業界の性質を改善していくこと、そして営業マン個人が顧客のためにスキルアップすることが大切だと当たり前に思える環境を作ることが、資格の名称を変えるより先のように思います。
いやいや、資格の名称変更が先だとおっしゃる方がいるのであれば、私はこう質問するでしょう。病気になって手術が必要となった時、「医師免許」を持っている人であれば誰ででもいいといって手術をしてもらいますか?評判を聞き、実績や人となりを確認し、信頼できるなと思った人に手術をしてもらおうと思いませんか?
少し例えが極端ではありますが、つまり資格ありきではないと言いたいのです。いくら新人営業マンでも、こちらが質問した事項に先輩に聞きながらでも真摯に対応してくれる方が、資格や知識をもって上から目線で対応されるより私なら好感を持ちます。
不動産業界のステータスアップに少しでも役立つのであればよい動きだと思いたいのですが、名前だけの一人歩きにならねば良いが…と感じるのは私だけでしょうか?

キムラミキ(マイアドバイザー 登録)
ラフデッサン/代表
AFP・社会福祉士・宅地建物取引主任者
鳥取県立米子東高等学校卒業後、日本社会事業大学 社会福祉学部 福祉計画学科にて福祉行政を学ぶ。
大学在学中にAFP、社会福祉士を取得。大学卒業後、アメリカンファミリー保険会社での保険営業を経て、株式会社アゼル(マンションデベロッパー)にてマンション営業、マンション営業企画に携わる。その後FP会社でのスタッフ経験を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。
筆者ホームページ http://ameblo.jp/miki-fp/
























