敷引金最高裁判例再考
連載: 読者コラム
最高裁判所による敷引金に関する判例が出ました。賃貸経営における、賃料、更新料、 礼金等の問題についての基本的な考えが整理されています。今後の対応策の指針になると 考えられます。
そこで、この最高裁判例の論点について、その前提を確認し、争点を整理し、どう解釈す べきか? つまり、今後、賃貸経営を行う上で注意すべき点を確認したいと思います。
1.事例の整理
まず、前提条件を確認しましょう!
既存住宅ストックの有効活用を通じて、住宅ストックの質の向上、住宅確保要配慮者を対象とした住宅セーフティネットの強化を目的とした国庫補助事業で、住宅要配慮者の入居を条件とし、空き家のある賃貸住宅のリフォームに要する費用を国が直接補助するものです。
契約内容
所在 | 京都市西京区桂北滝川町 | |
種類 | マンション一室(専有面積約65.6m2) | |
賃貸期間 | 平成18年8月21日~平成20年8月20日 | |
(契約期間2年普通借家契約) | ||
保証金 | 40万円(賃貸人の債務担保) | |
敷引金 | ||
経過年数1年未満 | 控除額18万円 | |
経過年数2年未満 | 控除額21万円 | |
経過年数3年未満 | 控除額24万円 | |
経過年数4年未満 | 控除額27万円 | |
経過年数5年未満 | 控除額30万円 | |
経過年数5年以上 | 控除額34万円 | |
通常損耗等については敷引金より賄い、原状回復を要しない。 | ||
更新料 | 9万6千円 | |
一時金 | 一括なし | |
明け渡し日 | 平成20年4月30日(20ヶ月10日) | |
保証金 | 21万円を控除 | |
それに対する法律~消費者契約法10条の判断は?
<要件>
1.任意規定に比して消費者の権利を制限、又は消費者の義務を加重する。
2.信義則に反して、消費者の利益を一方的に害する。
となっています。
その前提をふまえて、争点を整理しましょう。
要件1について
特約がない限り、 通常損耗等についての原状回復義務を賃借人は負わないし、補修費用を負担する義務を負わない。 つまり、この特約は賃借人(消費者)の義務を加重するものであるから、無効となる ~賃借人の言い分。
要件2について
敷引金の額について契約書に明示されており、明確に認識した上で契約が締結されており、明確な合意がされている。つまり、本来、賃料により回収すべき通常損耗等の補修費用を敷引金として授受することとし、(その分、通常の賃料より安い)賃料の額が合意されたと考えられ、賃借人(消費者)の利益を一方的に害するものとは言えないから、この契約は有効となる ~賃貸人 (大家)の言い分。
ということで、争点になったと考えられます。
解釈と今後の活用
考察1
敷引金の額が、通常損耗等の補修費用の額(通常想定される額)に対して、高額過ぎない事。
高額な場合においても、賃料が近傍相場より大幅に低額である場合には考慮される。
また、賃料については、更新料・礼金等の一時金についても考慮される。
考察2
この最高裁判例から読み取れる事は、更新料・礼金等の一時金、敷引金を含めて、“賃料総額として適正であるかどうか?” が、判断の基準とされている。
今後の賃貸経営に関して、この判例から読み取ることは・・・
○賃料は、契約期間に応じた実質的賃料総額~消費者の負担額がポイントになる。
だから、敷引金、更新料・礼金等の一時金の名目がどんなモノであっても、適正な賃料総額 (消費者の負担額)が問題になるので、その観点で賃料など諸条件を設定する必要があるということを肝に銘じたい。


猪股 豊(いのまた ゆたか)(マイアドバイザー.jp 登録)
(株)資産承継研究所 代表取締役社長。コミュニティサポートコンソーシアム合同会社【不動産・信託事業統括リーダー】。NPO法人 日本コミュニティライフサポートセンター代表理事。京阪神マンション管理士会理事。不動産実践塾『いの塾』塾長。大阪市立大学法学部法律学科卒業、大阪府立大学経済学部経済研究科修了。資産承継コンサルティング業務、税理士補助業務、不動産調査業務、不動産管理顧問業務、マンションコンサルティング業務、マンション管理者派遣業務、信託業務を中心とした事業展開を行っている。金融機関、建築士会、不動産団体、建築関連企業主催研修会、セミナー講師として活躍。
主な著書に、住宅新報社『マンションの価値を上げる 管理の超実践読本』(共著)。夕刊フジコラム『買って良いのか!このマンション』、住宅新報社新聞『不動産FPセミナー』執筆。
























