細野徹×殿木真美子 旬な作品=住宅レビュー= (14) 三井住空間デザインコンペ 三井不レジ「パークホームズ滝野川」
住宅新報 2011年3月15日 号 10面
連載: 旬な作品 住宅レビュー
三井不動産レジデンシャルが開催した第6回「三井住空間デザインコンペ」で、最優秀賞を受賞した「3つのリビングがある住戸」が2月上旬、報道陣に公開された。
JR埼京線板橋駅徒歩5分の「パークホームズ滝野川」2階にある、専有面積約69平米の住戸だ。既に成約済み。周辺で2LDKの物件を探していた30代前後の共働き夫婦が購入したという。
この「三井住空間デザインコンペ」は、「ディベロッパーと建築家・デザイナーとの新しい関係」を探り、集合住宅の新たな価値を創造することを目的に毎年開催され、10年は「夫婦とともに成長する住まい」がテーマとなった。
最優秀賞を受賞したのは、インテリアデザイン事務所フィールドフォー・デザインオフィスに勤務するデザイナー、藤原洋平氏(29歳)と板橋祐子氏(26歳)の2人。分譲マンションの住戸設計は今回が初めてだという。
コンペ作品のタイトルは「3つのリビングがある家」。プランは、ひとつの空間を2枚の壁をクロスさせて仕切り、4つの空間をつくったものが基本形だ。
南東角にある玄関を入ると、右手に浴室や洗面室などの水周り。通常廊下となる玄関前には、「趣味のリビング」と名付けられたタイル張りの空間がある。
趣味のリビングから見て右に「妻のリビング」、前に「夫のリビング」、そして奥にはオープンキッチンのある「二人のリビング」が広がっている。
壁の両側にある引き戸をすべて閉じれば、エントランスを広めに取ったいわゆる「2LDK」となるが、引き戸を全開すれば壁によって緩やかに場を分けたワンルームともいえる。
便宜上、それぞれの部屋に名前がついているが、引き戸を開閉したり、眺める位置を変えたりするうちに、自分なりの使い方が想像できるようなプランである。
「nLDKからの脱却と、フレキシブルであることの2点を前提とした」と語るのは、藤原氏。
「『脱・nLDK』といっても、分譲マンションが不特定多数の人に訴求しなければならないという性質を持っている以上、奇をてらったプランであってはいけない。商品として成り立つことが重要だと考えます」(藤原氏)。
商品として成り立つ、その答えが「フレキシブル」だった。
「フレキシブルな空間とは、汎用性のある空間ということであり、より多くの人に訴求するということ」とする藤原氏は、「間取りに可変性を持たせることで、nLDK型ではないプランでも分譲マンションの商品として成立する」と言い切る。ドアを閉めるだけでコミュニケーションが遮断される個室と違い、小さな窓や引き戸の隙間から、お互いの気配が感じられる空間。常にどこかでつながっている夫婦の関係性を思わせる。
それぞれが仕事を持ち、家事を分担し、楽しみを共有しつつ、個人の時間も大切にする。新しい夫婦の形が見えてくる間取りだ。
(殿木真美子)
とのき・まみこ=住宅ジャーナリスト。「ゆとり生活」をテーマとする雑誌の編集者を経て、05年から住宅分野に注力。新築・中古を問わず、年間数十件ベースでマンションを取材。『主婦目線』を心掛ける。

















