細野徹×殿木真美子 旬な作品=住宅レビュー= (6) ブリリア辰巳キャナルテラス 東京建物、日本土地販売
住宅新報 2011年1月18日 号 10面
連載: 旬な作品 住宅レビュー
超高層ではなく地上15階建て、敷地内に自走式の駐車場、まるで郊外型物件のようなファミリー向けのパンフレット…。湾岸エリアに建設中の「ブリリア辰巳キャナルテラス」(東京建物、日本土地建物販売)は、あらゆる面で「湾岸らしからぬ」マンションだ。その上、湾岸物件で初となるミキハウス子育て総研の認定まで受けている。
東京メトロ有楽町線辰巳駅より徒歩11分。豊洲・有明・東雲など人気の湾岸エリアと比べると、昔ながらの都営団地が広がる辰巳は知名度が低い。だが、その湾岸色をあえて外した差異化戦略が奏功して、総戸数232戸のうち10年11月末に販売された第1期117戸は即日完売した。
東京建物住宅商品企画部の野口真利子氏は言う。「今回ターゲットとしたのは、団塊ジュニア世代のファミリー層です。家族を第一に考える彼らは、ステイタス感のあるタワーより、もっと地に足の着いた物件を望まれています。当初はタワーも考えましたが、立地面で劣る辰巳で同じことをやっても意味がない。思い切って路線を変更しました」。
湾岸の利便性は捨てがたいが、豪華な設備・仕様や共用施設のあるタワー物件には興味がない、という層に見事にはまった戦略だといえる。
例えば、運河側の住戸が少ないため、だれもが眺望を楽しめるよう共用部は運河沿いの1、2階に集約。子どもが遊ぶデッキテラスなど、必要最低限の施設にとどめた。
特に注目すべきは、「食育」をテーマに据えた「キッチンスイート」プラン。以前から食育に力を入れてきた東京ガスをアドバイザーに、建築家集団テレデザインを設計・デザイン監修者に迎え、自然と食育ができる間取りを提案している。
具体的には、リビングではなくキッチンを家族の中心とする「DKW(ダイニング・キッチン・ワークスペース)」という発想に基づき、間取りの真ん中にアイランド型のオープンキッチンを配置。すべての動線の中心にキッチンがあるため、家族の誰もが調理に参加できる上、自然なコミュニケーションが生まれやすい。
カウンターはすべてオープンにして、料理が出来上がっていく過程を見せる。また、キッチンカウンターの下には一段低くしたワークカウンターを設置。子どもが学習したり軽食をとったりするスペースとなる。キッチンの背面には収納を標準装備し、面材もキッチンと統一。キッチンがどこからでも見えるプランであるため、美しさや統一感にこだわった。
これらの設計は、東京建物が顧客の生の声を聞くために設けたコミュニケーションシステムから生まれている。
キッチンスイートは、残念ながら14戸のみで既に完売。ほかにも、キッチンのすぐそばにカウンター机を置いた「コミュニケーションスイート」(14戸販売済み)、パイプスペースの余白を有効活用し縦長の掃除グッズ収納とした「スマートストレージ」(全戸に標準装備)なども、モニターの声を生かしたプランだ。
第2期の販売予定は2月中旬。専有面積は60平米-84平米で、予定販売価格は3420万円-5280万円。設計・施工は長谷工コーポレーション、11年11月下旬の竣工を予定している。
(殿木真美子)
とのき・まみこ=住宅ジャーナリスト。「ゆとり生活」をテーマとする雑誌の編集者を経て、05年から住宅分野に注力。新築・中古を問わず、年間数十件ベースでマンションを取材。『主婦目線』を心掛ける。

















