地域創生と金融(総括) 「地方自治体に裁量権+規制緩和」地産地消のグランドデザインが必須 潜在能力を引き出す 環境変化は〝千載一遇の好機〟 同一水準で全底上げ難しく 需要を生み出す仕組み重要
住宅新報 2023年12月19日 号 11面
「地方創生」という言葉が普及するようになってから久しい。約30年前には世界一を争っていた一人当たり名目GDP(国民総生産)は、既に31位にまで後退し、人口減少が本格化する中、日本は国を挙げて経済力を向上させる必要がある。そのためには、日本が有するポテンシャルを総動員し、一人当たりの生産性を高めていくことが求められる。「地方創生」は、地方やそこで働き住む人々にとってはもちろんのこと、日本全体にとっても喫緊の課題である。
政府も2014年に「まち・ひと・しごと創生総合戦略(総合戦略)」を策定しており、現在はその第2期総合戦略において、〝将来にわたって「活力ある地域社会」の実現〟と〝「東京圏への一極集中」の是正〟を目標とすべき将来として掲げている。
本連載では、こうした認識を踏まえつつ、そもそも「地域創生」をどのように捉えるべきか、そのために「金融」はどのような役割を果たすことができるだろうかといった観点から、数多くの有識者のご意見をうかがってきた。本連載の中でも語られた認識を筆者なりに解釈すると、大きく以下の3つのポイントに整理できる。
(1)「地域創生」のあり方
結論から言えば、地域ごとに特性や強みは異なるため、一般化するのではなく、地域が自らそのポテンシャルを発見し活用していくことこそが重要であるといえよう。
現代は第三次産業の全盛期であり、商業・サービス業にとって有利な地域に人が吸収され、都市機能も集中するのは極めて自然なことである。そうした中、人口も減少する日本において、すべての地域を同一水準で活性化することは難しいと言わざるを得ない。地域のさらなる活性化を目指す地域もあれば、衰退を抑制すべき地域があってもおかしくはない。したがって、ある特定の方針に従って、あるいは他地域の真似をして、地域創生を図るというわけにはいかない。
大切なことは、地域の強み、ポテンシャルが何かを、地域が自ら発見し、それを地域の行政、企業、金融機関などが共有して、その地域ならではの独自性を創造・発信していくことである。もちろん、国にも強力な後押しが求められるが、地域として何を強化・訴求していくかは、その地域を最も知る地域の人々が判断する必要がある。
だが、特定の地域に住み続けていると、地域のポテンシャルがかえって分かりにくくなる場合もあるため、広く国内外に知見を求める必要がある。そのためには多大な労力や投資が必要になると考えがちだが、例えば、地域の特産品を作る場合、現在ではインターネットを通じた商品の販売、SNSの活用、「道の駅」での販売などを通じて消費者と直接接触することができる。世界の消費者を相手に、商品のテストマーケティングや改善を行うこともできるのである。SNSを通じて、観光スポットを創出することもできる。より本格的な産業やイノベーションの創出には、地域の大学の協力を得ることも重要である。
とはいえ、地域やその位置づけを変えることは容易ではないという意見もあるかもしれない。だが、実際に都市の人口の推移を50年単位で見れば、大きく変化している。(表参照)
1876年には江戸時代の諸藩の規模の影響が大きかったが、貿易・軍事が重要になった1920年になると、長崎、函館、小樽、呉、横須賀、佐世保が発展する。戦後の1970年になると太平洋ベルト地帯などの工業都市に人口が集中する一方、日本海側の都市の衰退が目立ってくる。そして13年には、首都圏一極集中とともに、北海道、九州の中核都市となる札幌、福岡の成長が目覚ましいものとなる。
最近では、その周辺に、半導体メーカーのラピダスやTSMCが進出して新たな集積を築きつつある。すなわち、地域の位置づけは固定的なものではなく、中長期的には、環境変化や政策、地域の努力によって変わる可能性があるということである。
(2)「地方創生」と「金融」の機能
地域創生のためにインフラなどへの投資資金が必要であることは事実だが、逆に資金があれば地域創生が進展するというものでもない、むしろ、地域のポテンシャルを具体的な形で示せば、投資資金は自ずとそこに向かう。例えば、インターネット販売の普及により、地方圏での物流施設のニーズは年々高まっており、J-REIT(上場不動産投資信託)は、安定的に多額の投資を続けている。
大切なことは需要を生み出す「仕組み」を作ることが先であることだ。そうでなければ、いわゆる「ハコモノ」行政と同様に、利用頻度の低い(収益性の低い)施設を量産することになってしまう。需要を生み出すためには、地産地消を進める発想もあれば、大都市圏のバイヤーとの提携、海外需要の捕捉(輸出、インバウンド)など、多様な手段がある。ただ、そうした「仕組み」を構築するには、地域企業だけでは困難な場合も多い。そこで、金融はもちろんのこと、それ以外にも幅広いノウハウや行政・企業とのネットワークを有する地域金融機関の機能が重要なものとなってくる。一方で、一定の需要が見込める場合には、地方創生ファンドによって国内外の幅広い資金を活用することも有効だ。
また、官民が連携するPFI(公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法)の活用も有効である。Park-PFI(公園でのPFI、広場の整備、カフェの出店など)などのように、地域の人々が効果を実感できる事例を積み重ねていく発想も大切である。
(3)グランドデザインの重要性
前述したように、「地方創生」のあり方は多種多様である。戦後、日本では官民協調の下で、経済政策、産業政策、都市計画などが次々に策定され、それが日本経済の成長を支えてきた。ところが、社会経済環境がまったく変わった現在でも、その一部が陳腐化したまま規制として残っており、地域の発展を阻害している。また、産業政策と都市計画が融合していないために、効率的な計画を策定しにくい場合も散見される。
官庁の縦割り主義という問題だけではなく、少なくとも地方に関しては、その地域のことを最も熟知している自治体にある程度の裁量権を認めて、その地域に適したグランドデザインを描くことができるようにすべきだろう。これは県単位だけでなく、市町村単位でも同様である。その際に、十分に留意すべきなのが規制緩和である。国家戦略特区やJR中核駅前の容積率緩和などは、かなりの効果を発揮している。同時に、そうしたグランドデザインやそれに基づくプロジェクトを広く情報発信し、「知ってもらう」ことも大切である。
また、地域の変遷やライフステージに応じて、人々が住む家を自由に選択できることが望ましい。100年住宅を複数世代で循環させる発想(ハコの循環)に基づく「残価設定型住宅ローン」(一定期間後に設定した残価で住宅を買い取る仕組み)などのいっそうの活用も考えられる。
幸いにも、現在は社会経済環境が大きく変わりつつあり、「地域創生の千載一遇のチャンスともいえる(三井住友信託銀行・高橋温名誉顧問)」。コロナ禍によるリモートワークの普及、経済安全保障強化や食料自給率向上の必要性、全国での物流施設やデータセンターの需要増、円安・労働賃金の相対的な低下などによる国内への工場回帰などは、いずれも地方への新たな需要を生み出すチャンスでもある。中長期的なグランドデザインを描きつつ、着実にプロジェクト単位で進めていくことが、地域創生をより有効なものにしていくのではないだろうか。
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最後に、本連載にご協力いただいた有識者の方々に感謝申し上げます。
※このシリーズ終わり。



























