細野透×殿木真美子 旬な作品=住宅レビュー= (42) プラウドタワー東雲キャナルコート 野村不動産
住宅新報 2011年10月25日 号 12面
連載: 旬な作品 住宅レビュー
江東区東雲キャナルコート内に竣工予定の「プラウドタワー東雲キャナルコート」(総戸数600戸)は、東日本大震災後初めて新たに販売される「湾岸」の「タワーマンション」である。
いわば「二重苦」を背負った形の「プラウドタワー東雲」だが、震災を受けて、事前に資料請求のあった約3000件のうち3分の1にアンケートを実施。やはり地震・防災への備えが最大の関心事だと分かった。
これらを解消するために施した対策は大きく6つ。(1)主にインフラを守るための液状化対策追加工事、(2)1日24時間稼動可能なエレベーター用非常用発電機の追加装備、(3)5~8階ごと・計9カ所の防災倉庫の設置、(4)住戸の壁に家具転倒予防のための下地を標準装備、(5)タワー内2カ所の空中庭園に、災害時に無償で取り出せる機能のついた自動販売機を設置、(6)防災ガイドブックの作成、である。
細かいところでは、各戸のキッチン吊戸棚の扉と棚板の隙間を通常40ミリのところ18ミリとした。これは、震災後に、吊戸棚の扉を開けたら隙間に挟まった食器が全部落下してきたという声から生まれている。
ところで、東雲キャナルコートとは、UR都市機構らが主導する江東区東雲一丁目地区約16.4万平米のまちのことで、イオンや区の合同庁舎がある敷地西側が晴海通りゾーン、高層マンション群が並ぶ東側の辰巳運河ゾーン、公団住宅と生活利便施設が集まった中央ゾーンからなる。
当物件は辰巳運河ゾーンの最も北側、東京メトロ有楽町線豊洲駅から晴海通りを下って徒歩11分の場所に位置している。
キャナルコートではまちの開発に当たって、建物のデザインや角度など、様々な条例が設けられた。
中でも特徴的なのは、広場状空地の創出と、敷地境界から壁面を十分に後退させること。この条例によって、マンション群はどれも上へ上へと伸びる細身のボディとなった。
この建物形状のおかげで、叶わなかったことがひとつある。それは近ごろ流行りの「免震構造」である。免震でなく耐震構造を採用した理由について、野村不動産住宅カンパニー住宅建築部の天川恭一副部長は、「今回のように地上約180メートルと高く、細長い建物の場合、免震装置の積層ゴムが地震の揺れによって破損する可能性がある。揺れを軽減するため、タワーの基盤となる1階の4つの柱に、150N(ニュートン)という高強度のコンクリートを採用しました」と語っている。震災後に再度構造を見直したが、今回の震災規模の地震にも十分耐えうる強度との判断を下した。
なお、長周期地震動に対しては、「推定される建物の固有周期がどの振動周期にも当てはまらなかった」(天川氏)ことから、改めて対策はしていないという。
揺れへの対策としては、エレベーターの停止に対しては前述した対策(2)を、家具の転倒に対しては対策(4)を施した。隣家との仕切り壁にも金具を取り付けられるよう、管理規約の見直しまで行ったという。
第1期販売は11月下旬を予定し、予定平均坪単価は240万円前後。設計・施工は大林組、竣工は13年4月中旬を予定している。
9月に行われた予約制内覧会は、メンバーを増員して対応したほどの盛況ぶりだったという。今後の湾岸タワーの動向を占う試金石として、注目したい。
(殿木真美子)
とのき・まみこ=住宅ジャーナリスト。「ゆとり生活」をテーマとする雑誌の編集者を経て、05年から住宅分野に注力。新築・中古を問わず、年間数十件ベースでマンションを取材。『主婦目線』を心掛ける。

















