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スタンダード会員限定造る 未来 業界刷新への提案 日本人の感性と美学に訴える家を (10)

住宅新報 2018年3月20日 号 11面

連載: 造る未来

住まい・くらし

〝お試し居住〟のススメ

 中古住宅市場活性化策の一つとして、最初の半年か1年は定期借家権付き賃貸住宅として借りて、気に入ったら購入するという取引方法を加えたらどうだろうか。いわば〝お試し居住〟だ。

 購入する際は、既に住み心地や不具合の有無については確認済みであるからインスぺクションが不要になるのが最大の利点だ。念のため実施する場合でも居住している買主が行えば「売主の了解を取る」ような気遣いがいらない。

 4月から宅建業法上に位置付けられることになったインスペクションは、売るためにするのか、買うためなのかが実務上まだ判然としていない。「安心R住宅」はインスペクション済みの物件として市場に出されることになるので当然売主が実施することになる。

 しかし、インスペクション済みといっても、目視の範囲であり、調査対象部位も主要構造部などに限られているので、〝完全に安心〟ということではない。それなら、半年から1年くらい実際に住んでみてから買う方が、より安心できるのではないだろうか。

〝下取り〟を慣習に

 中古市場活性化を新築市場とリンク(連結)させることはストックの質向上を図る上で極めて有効と考える。

 そこで、一戸建て市場に限定するのが現実的だと思うが、新築住宅を売る事業者がそれを買う顧客の自宅を下取ることを慣習化したらどうか。下取りした住宅を「安心R住宅」として市場に供出することを条件に補助金を出すようにする。

 これは中古車市場からの連想だ。新車を買う場合には、それまで乗っていた車を下取りしてもらうのが業界慣習となっている。

 住宅もそうした慣習が広まれば、新築時から良質な住宅が供給されるようになるだろうし、ユーザーも大事に住んで下取り時の価格を高くしようと努めるのではないか。つまり、新築・中古両市場で質的向上が一気に進む可能性がある。

空き家で交流促進

 一戸建て住宅の空き家が増えている。地域に根を張る不動産会社がこれを借り上げ、地域住民が交流できる〝溜まり場〟に再生する。

 地域のお年寄りから子供まで、誰でも自由に集まることができる場所である。広い庭があって、草花が植えられているような家であれば、集まった人たちの話も弾むだろうから理想的である。

 もちろん、管理は不動産会社の仕事になるが、それで「楽しく、住みよいまち」という評判が広まれば人口が増える可能性もある。また、そうした寄り合い所に顔を出していれば、不動産売買につながる貴重な情報を入手することもあるだろう。

鍵握る賃貸市場

 不動産業界の未来を大きく変える鍵を握っているのはやはり賃貸住宅業界である。「家賃を払うのはもったいないから、マンションを購入した」という声をこの世から一掃すべきである。

 〝もったいない〟は「値打ちが十分に発揮されずに終わるのが惜しい」という意味で、ときにその精神が日本人の美徳と称されることもある。

 しかし、家賃について言われることは、業界は恥じなければならない。なぜなら提供している居住空間や管理サービスの値打ちが家賃の額に見合っていないといわれているのも同然だからである。〝顧客満足〟こそ、サービス業の基本である。

住宅のスタンダード

 最後に提案したいことは、日本の一戸建て住宅市場に、〝新たなスタンダード〟をつくったらどうかということである。耐震・耐久・省エネ・断熱などの基本性能は当然備えた上で、日本人の感性と美学に訴える住まいである。

 小さくてもいいから四季の変化を楽しめる庭園、数の上では十分国内需要を賄えるといわれる国産材の使用、柱・梁などの構造部材をむき出しにした工法などが要件になるだろうか。構造部材を露出させることは、見た目にも安心感があるし、当然インスペクションもしやすい。

 もう一つの大事な要件は、住宅の資産価値である。そのためには、地域の資産価値を害することがないようにすること。住まいにも個性を感じさせる要素は必要だが、個性が強過ぎて〝奇抜〟になれば、地域の美観を損ねるだろう。

 また、コミュニティの良質性が今後の地域の価値向上に欠かせない。そのためには、空き家を活用したコミュニティサロンも必要だが、個々の家の構造が〝外に開かれた〟設計になっていることも大切である。地域の人が立ち寄りやすい〝縁側〟の復活は無理だとしても、玄関の土間スペースを広くしてそこでお茶が飲めるような設計も考案すべきではないだろうか。

 人口が減り、単身世帯が増える今後の日本社会に暖かい日差しを取り込むような、日本の住宅のスタンダードが求められている。 (本多信博)

          おわり

 

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