増える廃業?
中小企業庁によると、今後10年間に70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万社(日本企業全体の3分の1)が後継者未定となっている(図参照)。こうした現状を放置すると、今後中小企業の廃業が急増し、25年までの10年間の累計で約650万人の雇用と、約22兆円のGDPが失われる可能性があるという。
そこで経済産業省は来年度から、中小企業経営者の次世代経営者への引き継ぎを支援する税制措置を創設・拡充する。今後5年以内に承継計画(仮称)を提出し、10年以内に実際に承継を行う者が対象となるが、その内容は極めて革新的だ(別掲)。
中小事業者の事業承継は後継者の選定から始まり、その育成期間を含めれば5~10年は必要となる。しかも、「事業の将来性がない」「子供に継ぐ意思がない」「親子で話し合う機会が少なく、思いがすれ違いやすい」などの理由から、税制問題を抜きにしても事業承継が実現するには多くのハードルがあるという。
中小事業者が多い不動産業界は今、少子高齢化・人口減少などを背景に今後は需要が縮小し続けるとの見方が一般的だ。しかし一方では、成熟期に突入した日本経済を「ストック活用」や「地域再生」などの内需面から支える重要産業になるのではないかとの期待も高まっている。
内需支える産業
特に「地域」の再生や活性化は地元不動産会社の役割となる。将来にわたって地元から逃げ出すことができないからこそ、提案プロジェクトに対し、地域住民や地元自治体の賛同や信頼が得やすい。ただ、そうした信頼や信用に応えるためにも、円滑な事業承継が欠かせない。
そうした中、不動産業2代目の会として、88年に発足した「承継者の会」(現・翔経塾)が今年30周年を迎えようとしている。それを記念した座談会がこのほど都内で開かれた。出席したのは名誉塾長の花沢仁・花沢ホールディングス代表、橋本岩樹・リゾン会長、佐藤俊行・第一リアルティ社長の3氏で、いずれも会創設時からのメンバーだ。
発足時はわずか18名だった会員が現在は約50名と大きく成長した。しかも、20周年のときには会幹部の世代交代も円滑に行われている。座談会では30年も継続している要因について「親子間の承継という、メンタル的にはかなり微妙で難しい問題と真剣に向き合い、二代目という同じ境遇にある会員同士が親には言えない悩みを打ち明け合うなど〝なくてはならない会〟に育ってきている」点が指摘された。同会の中には二代目候補を同じ会員企業に預け、修業をさせている例も多い。
座談会では、翔経塾の今後について「今まで通り会員間の結束を強めていくための様々な仕掛けづくりが必要だが、これからの若手には創業者の想いや魂を伝承していくこと自体に、実は社会的意義があるということについても分かってもらいたい」との意見がなされた。
「女性塾」も台頭
「翔経塾」は男性経営者らの会だが、女性の不動産業経営者らが16年11月に設立した「不動産女性塾」も活発な活動を見せている。塾長の北澤艶子氏(北澤商事会長)は「女性塾として情報発信し、様々な活動をしていくことが、不動産業に携わる女性たちのパワーの元になり、次世代の女性が輝きながら仕事ができる不動産業界に変革していく力にもなる」と話す。今後も月ごとに多彩なイベントを実施していく方針だ。
同女性塾には母親から娘への事業承継を既に果たしている企業もある。母親と娘は、翔経塾でよく指摘されるような「父親と息子との間にある宿命的反発意識」は、あまりないのかもしれない。だとすれば、昨今女性経営者が増えている不動産業界だが、二代目女性社長への承継も順調に増えていく可能性がある。 (本多信博)
<創設・拡充される事業承継税制>
・相続税の納税猶予対象になる株式数の上限撤廃(現行は3分の2まで)
・納税猶予割合を評価額の100%に拡大(現行80%)
・現行は一人の先代経営者から一人の後継者へ贈与・相続される場合のみが対象だが、改正後は親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も対象とする
・現行は後継者が自主廃業や売却を行う際、経営環境の変化により株価が下落した場合でも、承継時の株価をもとに贈与・相続税が課税されるが、改正後は廃業や売却時の評価額をもとに納税額を計算し、承継時の株価をもとに計算された納税額との差額は免除される
・現行は税制の適用後、5年間で平均8割以上の雇用を維持していなければ猶予が打ち切られるが、改正後はこれが未達成の場合でも猶予の継続が可能


















