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プレミアム会員限定点検・不動産投資 新成長分野への展開 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 ■18 「ヘルスケア」 (17) ヘルスケア市場の総括(下) 着実な資産増加が鍵に

住宅新報 2016年8月9日 号 3面

連載: 点検 不動産投資

投資

(前号からの続き)

 投資対象の価値判断には、事業者が対象施設を運営して、投資家に賃料を確実に支払えるだけの収益を上げることができるかどうかが重要なポイントになります。事業収入から事業支出を差し引いた残りが「不動産関連費用控除前利益」となり、ここから「経営帰属利益」(所有機器更新支出、事業者の適正利益など)をマイナスしたものが「負担可能賃料」となります。事業収支をチェック

 これが実際の契約賃料を上回っていれば、その施設の採算が成り立つので、契約賃料を基に投資対象施設の評価を収益還元法で評価することになります。不動産というアセットの評価ではあるものの、その前提として事業収支のチェックが必要となる点が、まさにオペレーショナルアセットの特徴であるということができます。

 ヘルスケア分野に関しては、既にJリートで専業3社が上場しており、各リートが200億~300億円程度の物件を保有しています。いずれも事業者(施設のオペレーター)とは、固定賃料で10年以上の長期賃貸借契約を締結しており、安定的な収益基盤を構築しています。

 また「高齢者施設・住宅」では、1件当たりの投資規模が相対的に小さく、資産を一気に積み上げるのは難しい面がありますが、施設に対する需要はますます増加しており、着実な資産増加が期待されます。

 とはいえ、物件取得の競争環境が厳しくなってきているので、今後は施設のオペレーターと連携した物件取得や、リートのスポンサー企業などによる新たな開発物件への投資といったスポンサーサポートが重要な役割を果たすようになってくるでしょう。ヘルスケア施設の特徴を生かして、日本ヘルスケア投資法人では、投資家に減価償却費の一部を活用した利益超過分配を実施しているのも興味深いところです。

5つの課題

 ヘルスケア投資における課題は、以下の5点に整理することができます。

 第1点目は、これまでの「高齢者施設・住宅」の7~8割は、個人(個人企業を含む)が資産有効活用の観点から供給してきたものであり、施設規模が小さく、投資に馴染みにくい、あるいは所有者が流動化しようとしないものが多いことです。

 1施設当たりの平均居室数は、有料老人ホームで36.5室(介護付は56.4室)、サ高住では32.4戸になっています。需要に応える意味でも、投資対象となる施設を新たに開発していくことが求められます。

 第2点目は、民間事業者による供給増を下支えしている「介護保険制度」について、高齢者人口の増加・生産年齢人口の減少により運用が厳しくなってきていることです。今後は、そのあり方が問われる可能性もあります。

 第3点目は、施設の運営を担う介護業務従事者の確保の問題です。最近の景気回復とともに、人手不足はいっそう深刻なものになってきています。このことが施設そのものの供給制約要因になりかねません。

 第4点目は、「要介護者」向けだけでなく「自立者」向けの施設供給にどう取り組んでいくか、病院などへの投資をどのように考えるかという、ヘルスケア分野での投資範囲の拡大の課題です。

 第5点目はオペレーショナルアセットの価値判断の前提となる「オペレーション」の評価のあり方です。金融機関の審査業務のように、評価事例を積み重ねていく中で、その結果検証を続けていくことが必要でしょう。

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