点検・不動産投資 新成長分野への展開 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 ■16 「ヘルスケア」 (15) 学研ココファンホールディングス小早川仁社長に聞く 拡大する投資市場に対応
住宅新報 2016年7月19日 号 3面
連載: 点検 不動産投資

小早川仁社長
(前号からの続き)
――高齢者住宅の投資市場が拡大してきています。
多様化するサ高住
今後、高齢者住宅への需要が増大することは明らかだ。更に地域の高齢化ニーズに包括的にサービスを提供する拠点型サ高住や、子育て世帯と共に暮らす多世代共生型の住宅などサ高住の多様性が求められはじめている。今までのような個人の遊休地活用中心の開発だけでは運営事業者主体の開発は難しく土地・資金にも限界がある。そうした点を勘案すると、高齢者住宅の運営事業者が投資家の資金を活用して流動化し、新たな開発に取り組んでいくことは数と質の充実に繋がり、社会的にも有意義なことである。
しかし、高齢者住宅の一部の保有者や運営事業者は、投資スキームを必ずしも十分に理解できていないため、ともすれば福祉を食い物にして利益を上げようとしていると取られてしまうこともある。
また高齢者住宅の入居者が、住宅の所有者が変わることに不安を覚える場合も多い。例えば入居者は、「住宅の所有者がA社からBというファンドに変わる」と聞いていたのに、所有者変更の通知が信託銀行から来て(住宅が信託受益権化されていたため)、疑心暗鬼に陥ってしまった事例もある。市場の発展のためには、こうした点にも留意していく必要がある。
――高齢者住宅の流動化促進のために、そのほかに必要なことは何でしょうか。
評価スキルに期待
かなり洗練されてきたものの、市場関係者の高齢者住宅の評価スキルがまだ不足しているように感じる。通常の住宅と高齢者向け住宅では、特に属人性の高いサービスが付いている点において大きな違いがある。例えば、居室から階段や風呂場までの距離、緊急通報装置の種類、コンセントの位置などによって、スタッフの動線が変わり、結果的に収益にも大きな影響を与える。同じ立地や規模であっても、高齢者向け住宅としての価値には大きな違いが生じるが、こうした差異が必ずしも適切に評価に反映されていない場合がある。また、収入のうちどれだけをパブリックペイ(公的補助金)に依存しているかといった収支の安定性に関する点もそれほど考慮されていないようだ。
その結果、何十人もの入居待ちがいる高齢者住宅のリスクプレミアム、さらには利回りが、空室を抱える学生向けアパートよりも高くなるような現象も生じている。優良な高齢者住宅に適切な評価が与えられなければ、供給の阻害要因となってしまう。
一定規模以上の企業が保有・運営する物件を流動化する際には、金融機関は資金を付けてくれ易いが、そうでない場合は貸し付けに消極的になるのも、やはり評価手法が定着していないことが一要因になっているように思う。最近では、評価スキルを学ぶため、金融機関から当社グループに研修に来られることもある。
もう一つの問題は、不動産流動化にはコストがかかるということだ。自社で企画・開発・所有・運営ができ、そのノウハウが優れていれば、最小コストでの運営が可能になる。結果として、エンドユーザーとなる入居者に対する家賃などの負担を減らすことができる。ところが流動化案件の場合、デベロッパーが開発して開発利益を上乗せした上でファンドに売却し、ファンドのアセットマネジャーやプロパティマネジャーもフィーを取得する。また、ファンドの投資家にも一定の期待利回りを提示する必要がある。こうなるとコストが増加せざるを得ないので、そのしわ寄せが入居者の高い賃料負担につながってしまう。関連するプレイヤーが少しずつ利益を削り、入居者が負担しやすい賃料負担の範囲内での住宅を提供していくことが、市場の発展ならびに高齢化社会の課題解決につながるのではないだろうか。
――高齢者住宅を投資対象とするのに、情報開示の充実も欠かせません。
難しい情報開示
対象物件の物件情報やサービス内容について開示することは、投資家から資金を呼び込むうえで大切なことだと認識している。ただ、入居者情報の開示が本当にどこまで必要かなど、個人情報との関係もあり判断が悩ましいところだ。また、オペレーション・マニュアルや従業員のシフト表などの提出まで求められると、情報開示を通じて企業のノウハウが漏えいする恐れもあるため、これらのバランスを取って検討する必要があるだろう。
――都市再開発でも、高齢者住宅に対するニーズが高まってきています。
公的な再開発で、当社グループに高齢者住宅運営の依頼がくることが増えてきている。公的主体が底地を持って事業を進める際によく問題になるのが、完成後の高齢者住宅を売却(流動化)する際に、底地権者の同意を求められるということだ。売却するのに議会などの承認が必要ということになると、実際に買い手が見つかった際、承認を得ることができる保証がなくなってしまうため、もう少し柔軟な対応が望まれるところだ。
――御社グループで私募ファンド「ココファンド」も組成されています。
当社グループは、前述の観点から流動化に積極的に取り組んでいる。現在のファンドで物件を買い増して更に大きくしていくか、若しくは新たな私募ファンドを立ち上げるか、Jリートに売却するか、あるいはその組み合わせなのか、色々と検討しているところだ。
こばやかわ・ひとし=(株)学研ココファンホールディングス代表取締役社長。90年(株)学習研究社に入社し、07年(株)学研ココファン代表取締役社長に就任。08年から現職。現在(株)学研ココファン・ナーサリー代表取締役社長、(株)学研ココファンスタッフ代表取締役社長、(株)学研ホールディングス取締役も務める。公職としては、現在、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会高齢者住替え支援推進部会副部会長、一般財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会会長など。
























