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プレミアム会員限定点検・不動産投資 新成長分野への展開 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 ■14 長谷工総合研究所上席主任研究員吉村直子氏に聞く 介護従事者の確保課題に 「ヘルスケア」 (13)

住宅新報 2016年7月5日 号 3面

連載: 点検 不動産投資

投資
吉村直子氏

吉村直子氏

関連記事: 点検・不動産投資 新成長分野への展開 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 ■13 「ヘルスケア」 ――(12) 長谷工総合研究所上席主任研究員吉村直子氏に聞く 介護保険のあり方問われる

(前号からの続き)

 ――高齢者向け住宅では、顧客との契約はどのような仕組みになっていますか。

 事業者と顧客との関係では、大きく(1)賃貸借方式(主にサ高住)、(2)利用権方式(主に有料老人ホーム)、(3)所有権方式(シニア向け分譲マンション)の3つに分けることができ、それぞれの方式ごとに自立者向けと要介護者向けが存在する。有料老人ホームの数が多いため、結果的に利用権方式が最も多く用いられているが、事業者が経営破綻した場合の法律関係など整理すべき課題も少なくない。また、普通建物賃貸借や定期建物賃貸借の場合は相続人が地位を承継することが可能であるが、利用権方式の場合は一代限りの権利となる。

 一方、所有権方式で供給されているシニア向け分譲マンションは、ほとんどが自立者向けであり、レストラン、大浴場、娯楽室などの共用施設を充実させて魅力付けをしている。顧客に対しては資産を保有できるメリットをうたっているが、用途が特定されているだけに、中古市場が形成されていないというのが現実だ。

 ――民間企業が運営する高齢者向け住宅は、比較的小型のものが多いようです。

 民間企業が運営する高齢者向け住宅の多くは、個人や企業が土地の有効活用として住宅を建築し、それをオペレーターである民間企業に一括賃貸する事業形態で供給されてきた。すなわち、住宅を建築しているのは個人や企業なので規模的にはどうしても小さくなりがちである。

 1施設当たりの平均居室数は有料老人ホームで36.5室(介護付は56.4室)、サ高住では32.4戸に過ぎず、米国の主要オーナーの1施設当たり平均約100室とはかなりの差がある。

 このため今のところ、Jリートが投資対象にできるような中型~大型クラスの物件はかなり限られている。これからは、リートとスポンサー会社が協力して投資適格物件を開発していくことが必要だ。

進まない住み替え

 ――高齢者向け住宅に入居するのは何歳くらいからでしょうか。

 日本では高齢化の進む欧米諸国と異なり、高齢期になったら一般住宅から高齢者向け住宅に住み替えるという〝早めの住み替え〟が思ったように進んでいない。このため、「要介護者向け」はもちろんのこと、「自立者向け」を標榜する住宅であっても、入居時の平均年齢は80歳前後という高齢にシフトしている。

 これは介護保険の介護報酬に依拠したビジネスモデルを採る事業者が多く、要介護者向け住宅と介護サービスをパッケージにした形で施設を提供していることも影響していると考えられる。また、ある程度金銭的に余裕があって、早めに高齢者向け住宅に住み替えようと思っても、自立高齢者や夫婦での入居にも対応できるような広め住戸の物件が極めて少ない。

 一方、一般の分譲マンションでも建物の老朽化と共に入居者の高齢化が進んでいる。とすれば、高齢期に高齢者向け住宅に住み替えるのではなく、今居住しているマンションを高齢者でも住みやすいようにリフォーム(あるいは大規模改修)してそのまま利用し続けることも考えられる。ただ、そのためには、マンション管理会社などがハード面の管理のみならず、高齢者向けの生活支援サービスを提供できるようになることも必要だろう。

供給制約懸念も

 ――介護に携わる人手不足も騒がれています。

 これから高齢者は確実に増えるので、高齢者向け住宅に対するニーズが増大することは間違いない。だが、施設の運営を担う介護業務従事者がなかなか集まりにくい状況だ。00年代に順調に高齢者向け住宅を整備できたのは、景気があまりよくない時期が続き、介護従事者を雇いやすかったことも大きな要因となっていた。ところが最近の景気回復と共に、介護事業分野での人手不足は一層深刻なものになってきている。下手をすると、このことが施設そのものの供給制約要因になりかねない。移民を受け入れていない日本で、介護従事者をどのようにして確保していくのか、東アジア型の新たなビジネスモデルを構築していく必要があるだろう。

 よしむら・なおこ=(株)長谷工総合研究所上席主任研究員。奈良女子大学大学院家政学研究科修了。92年(株)長谷工コーポレーション入社。94年(株)長谷工総合研究所に出向、12年より現職。高齢者住宅事業に関わる制度・政策や市場環境の評価・分析、事業計画立案のための調査・研究、コンサルティングに携わる。著書に「実践〝高齢者の住まい〟~医療・介護・住宅からのアプローチ~」(共著、創樹社刊、10年)、「福祉住環境コーディネーター検定試験1級公式テキスト改訂4版」(共著、東京商工会議所刊、16年)他。

 

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