点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 「地方創生」シリーズ46新潟・北陸 地価上昇も成約は限定的 日本不動産研究所金沢支所主任専門役藤井悠司氏に聞く
住宅新報 2016年2月23日 号 5面
連載: 点検 不動産投資
地方創生シリーズ「新潟・北陸」の金沢を取り上げる46回目は、日本不動産研究所金沢支所の主任専門役で不動産鑑定士の藤井悠司氏へのインタビュー前半。まもなく新幹線開通から1年が経つ金沢市。宿泊料金の高騰といった問題も表面化してきた現在の住宅・不動産市場の動向について、直近の街の変化の様子を交えて話をお聞きしました。
――北陸新幹線開業が金沢市に観光客やビジネス客など大幅な増加をもたらし好影響を及ぼしていますが、どのように分析されていますか。
藤井氏 一部に過熱を感じるのも事実だが、当面はこの勢いが持続するという見方が地元では優勢だ。最も北陸新幹線開業の恩恵を受けているのは金沢市内の宿泊施設だ。例年、12月から2月にかけた時期は60%前後の低稼働に落ち込むシーズンオフにあたるのだが、今シーズンはこの時期も高稼働を維持している。期待値も含めて当面はこの高稼働が持続するとの見方がある一方で、宿泊料金の高騰という反動も見受けられる。宿泊料金の上限を設けて対処しているビジネスホテルもみられるが、中には上限制限を設けていない青天井のホテルもあり、よくない評判も聞かれる。
市内の宿泊部屋数がそれほど大幅に増加していないことが大きな要因だ。開業を見込んだホテルの開業もあったが、それ以前に撤退したホテルもあって旺盛な宿泊需要に供給が追いついていないことが宿泊価格の急騰の背景にある。新幹線開業効果もいずれは落ち着く時期が来るはずで、金沢市の不動産市場がそれまでどのように変貌を遂げていくのかしっかりと分析していきたい。
――|土地価格も金沢駅西口中心に値上がりが顕著です。
藤井氏 これまでも新幹線開業への期待から駅周辺では局地的な地価上昇が見られていたのだが、直近で発表された都道府県地価調査では更に広域化する傾向が顕著となり、商業地で上昇率が10%を超えた地点が9地点に増えた。金沢駅周辺から香林坊をはじめとする商業地は特に高い地価上昇が見られた。中でも木倉町は前の期まで下落していたのが、一転して二桁上昇と跳ね上がり、新幹線開業の効果が如実に表れた格好だ。
ちょうど一昨年の4月に金沢支所に異動したため、新幹線開業前後の市場を見ることができた。一時期は香林坊、片町といった繁華街の店舗も金沢駅周辺に移転し空き店舗が増加傾向にあったのだが、開業前後からこれらのエリアの空き店舗も減ってきている。
――香林坊をはじめとして従来の中心商業地の店舗・事務所の賃料上昇が見受けられますが、土地の成約価格も上昇基調が続いているということでしょうか。
藤井氏 中心商業地の賃料水準はオフィスも店舗も確実に上昇している。しかしこのエリアにおける土地の成約は極めて限定的なのも事実だ。売り値がつり上がり、価格目線が合わず成約に至りにくいというのが現在の市場の実態で、厳しい土地評価を迫られている。賃料水準も右肩上がりの急上昇という水準にはなく、賃料上昇を踏まえつつキャップレートの下降に裏付けられた地価の上昇局面という表現が正しい市場の実態を表していると思われる。
――金沢のポテンシャルをどう見られますか。
藤井氏 石川県は人口115万人程度であり、福岡のような地方の大都市と同じ方向性で都市が成長していく構図は考えにくい。金沢のポテンシャルは、全国に知られる魅力的な観光資源が豊富にあることで、それを生かして交流人口を増やしていける潜在力は高いと見ている。
小規模な不動産投資は散見されるが、例えばリートの投資の受け皿になるようなスケールメリットのある不動産の投資対象という見方をすると、市内には数える程度しかない。金沢市はリートクラスの大規模な不動産投資の受け皿にはなり得ないのではないだろうか。(続く)


























