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スタンダード会員限定不動産業 リノベ宣言 ~地域からの発想~ ◇8 「金沢R不動産」運営者のE・N・N 建築がコミットすれば面白い

住宅新報 2015年11月24日 号 17面

連載: 不動産業 リノベ宣言 ~地域からの発想~

住まい・くらし
古い町並みに似合う町家を改装した八百屋さん

古い町並みに似合う町家を改装した八百屋さん

 「エンは、建築家の僕たちが欲しかった不動産会社です」と小津氏は言う。そういえば、東京R不動産の運営会社スピークの代表者と役員も建築の専門家である。

 「例えば、顧客が住宅を建てるとき、普通の不動産屋さんは、形のいい土地つまり値段の高い土地を紹介しがちです。だから、どうしても建築費にしわ寄せがくる」

 「むしろ変形でユニークな土地のほうが価格が安いから建築費は削られずに済む。変わった土地だと建築家の創作意欲も湧く。土地に限らず、町家の再生など建築家が不動産にコミットしていくと、面白いものができると思う」

 「土地はいい建物が建っていてこそ価値がある。どんな建物が建てば、この土地が生きるかという目で物件を見ることが大事だ」

 ということは、住宅を求めている顧客に対し、その要望を聞いた不動産会社が土地だけを紹介し、あとから建築家に建築を依頼するよりも、土地探しの最初から両者が同行した方が、顧客の希望をかなえやすい。

 「更に、これからの建築家は従来のような〝造形ごっこ〟をしていてはいけない。冷たい空間をつくるだけではなく、その空間を生きた場にしていくためのOS(オペレーションシステム)を組み込む必要がある。建物には永続性が大事ですから」

 エンでは3人の社員が毎日、金沢市内を隈なく歩き、サイトに掲載できそうな物件を探している。R不動産サイトは不動産のセレクトショップといわれ、趣味や個性を大事にする人やライフスタイルにこだわる人が物件を探しにくる。「犀川を眺められる部屋はないでしょうか」「茶屋街の雰囲気が感じられるところに住みたい」とか。

残したい町並み

 中でも多いのが、古い町家を改装して住みたいとか、店を出したいとかいう希望だ。同市内には、江戸時代から残っている古い町家が、まだ4000軒はあるといわれる。 スタッフは空き家になっている町家を見つけると所有者を探し出し、再生すればこういう価値が生まれますよと提案する。「今そうした活動をしなければ、せっかく戦火を逃れてきた歴史的町並みが、いずれは消えてなくなってしまう」と小津氏は焦燥感をにじませる。

 金沢R不動産には東京からのUターンやIターン希望者の問い合わせも多い。「全国の地方R不動産が、地方創生に一役買うことができるのではないか」と同氏は期待する。 地方R不動産は現在、稲村ケ崎(鎌倉)、大阪、神戸、福岡、鹿児島、山形、房総(千葉)などがある。〝R不動産サミット〟も開かれている。13年には金沢で、今年は福岡で開かれる。全国のR不動産運営・仲介会社が一堂に会し、地方移住希望者を呼び込むためのノウハウや情報を共有する意義は大きい。

 空き家の活用や地域の活性化を通じて、不動産会社が地域のリーダーとなっていく可能性も生まれる。そのためにも、建築家と不動産業との融合を促進し、更に自治体と協議するなどして、規制緩和も進めなければならない。

 小津氏は言う。「空き家活用には、規制を緩和して住宅を住宅以外の用途に利用できるようにすることが鍵だ。今は住居専用地域では旅館にコンバージョンすることができない。町家を〝宿〟として住みたい人は多い」。町家を短期滞在施設に転用することができれば、外国人も含め多くの観光客を呼び込むことができるだろう。

 「建築家は毎年、大学から輩出されるので競争は厳しい。中小不動産会社も生き残りを掛けた危機感が強いといわれるが、今こそ両者が連携し、新しい不動産業を開拓するときではないか」

 小津氏が社員を採用するときの基準は不動産を見る目と、その魅力をサイト上で表現する文章力だという。そして、こうも言う。「そのときに大事なことは、誰に向けて書いているのかということです」。 住まいを不特定多数の人に大量販売する時代は終わったようだ。 (本多信博)

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