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プレミアム会員限定点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「地方創生」シリーズ34 宿泊施設の再生が顕在化 環境不動産普及促進機構事務局次長兼企画・調査研究部長後藤健太郎氏に聞く

住宅新報 2015年11月24日 号 5面

連載: 点検 不動産投資

投資
後藤健太郎氏

後藤健太郎氏

 シリーズ34回目からは、環境不動産のストック形成事業に取り組む環境不動産普及促進機構の後藤健太郎氏へのインタビュー。全国各地の金融機関や事業者から不動産の再生に関わる相談に追われる同氏に、「地方創生と不動産投資」を切り口に話をうかがいました。

 ――はじめに環境不動産普及促進機構の事業の概要をご説明ください。

 後藤氏 世界規模で環境問題が深刻化する中、日本国内においても都市部を中心に耐震・環境性能に劣る多数の老朽不動産が存在しており、これらの再生という喫緊の課題に直面している。環境不動産普及促進機構(Re-Seed機構)は、安全・安心な持続可能(サステナブル)かつ耐震・環境性能を有する良質な「環境不動産」の供給促進と不動産投資市場の活性化を図ることを目的に2013年(平成25年)に設立されました。当機構が耐震・環境不動産支援基金の基金設置法人となり、国土交通省と環境省の共管事業である「耐震・環境不動産形成促進事業」の運営を担っています。耐震性能、環境性能に劣る老朽・低未利用不動産の改修、建て替え又は開発を行うものに出資などを行って、早期に良質な環境不動産ストックの形成を目指すことが主な事業です。

 ――全国各地の金融機関を通じて、耐震や環境への対応を求める地方や地域の声をヒアリングされてきましたが、具体的にどのような潜在ニーズがありましたか。

 後藤氏 我々の事業においてこれまでに6件の出資実績がありますが、それらの立地は東京、横浜、大阪といった大都市圏に限られています。老朽化不動産のバリューアップが主な目的ですが、その一環として省エネ改修も合わせて実施したいというニーズがあり、当機構の資金を活用してもらいました。

 ご承知のとおり、耐震改修促進法により今年12月末までに建物用途に応じて1物件あたり5000m2以上で一定の階数以上の施設については、耐震診断結果の報告を行うことが義務付けられています。そうした中で、観光旅館業を主な地域産業の柱としている地方都市におけるホテルや旅館といった宿泊施設の相談が顕在化しています。実際に当機構においても、訪日外国人の急増でインバウンド需要が拡大し宿泊需要が活況であることなどから、東京と大阪に立地しているホテルへの出資実績があります。

 ――「地方」都市で改修資金のニーズが表面化しているということですが、貴機構の事業対象エリアはどのようになっていますか。

 後藤氏 不動産投資による良質な環境不動産の供給促進という機構の目的からすると、地方とは不動産投資事業が成立する地域ということであり、限定はしておりませんが、主には地方主要都市が対象になると捉えています。一定の規模のある旅館、ホテルの再生に当機構の資金が活用できないかという相談は、ここ1年でかなり増えてきました。地域の金融機関にも同様の相談が多く寄せられているようです。

 そもそも、事業としてしっかり運用がなされる不動産に対して、投資家が投資し、分配金を得るのが不動産証券化のメリットです。我々の事業は、そうした条件を満たさず、民間資金が集まりにくい不動産事業に耐震や省エネの改修のための資金を、民間投資の呼び水となるリスクマネーとして一部分入れて、不動産投資市場につなげていくところにあります。

 そこで問題となるのは、出資条件に合致するかと証券化に伴うコストアップです。我々の出資事業は、不動産証券化を活用したスキームであるため、不動産を証券化してまで事業を行うかどうかという点が絶えず付きまとうことです。当然、耐震改修を主目的とした改修ニーズとは合致しないケースも出てきます。耐震改修で投資対象不動産に再生できるのかが重要なポイントとなり、時には建て替えという選択もでてきます。金融機関も、融資するローンを回収できるかを審査し、当然ながら事業として成立しなければ事業中止の判断もありえます。

 一方で、改修や再生を機に所有と利用を切り離し、時にはオペレーションも変えて、老朽化した優良な不動産を当機構の資金を使って再生させたいというニーズもあります。中でも地方に立地するきらりと光る資産(不動産)についてはそうした相談が多く寄せられます。不動産事業として、かつ不動産証券化が成立するという条件はハードルが高く、支援対象となる不動産も絞られてくる点は否めませんが、地方目線という意味で、地域産業や地元企業にとって所有する不動産の再生意義は高く、その支援に当機構の資金が活用できるところには大きな意義があると考えています。事業を開始して2年が経ち、出資実績も増えてきたことからようやく資金調達の選択肢の一つとして関心を持ってもらえるようになってきたと実感しています。 (続く)

 ごとう・けんたろう=92年日本不動産研究所入所。不動産の市場分析、投資採算分析、不動産価値、利活用戦略、建物に係る調査研究等を主な調査研究領域として担当。13年より現職。現在は、国交省・環境省共管「耐震・環境不動産形成促進事業」の運営に従事。国交省環境不動産普及促進検討委員会委員等。一級建築士、再開発プランナー。中部大学大学院工学研究科環境計画講座博士課程前期修了。65年福岡県生まれ。

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