点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「地方創生」シリーズ17仙台 被災県、移転需要で地価上昇 日本不動産研究所理事東北支社長茂木泰氏に聞く
住宅新報 2015年7月21日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

茂木 泰氏
――最初に、日本不動産研究所の業務概要についてご教示ください。
茂木氏 当研究所は1959年に設立されてから56年間にわたり、不動産に関する調査研究・鑑定などに従事してきている。現在では、東京の本社のほか日本国内に8つの支社、41の支所があり、海外でも上海に支店があるほか、米国、欧州、中国、韓国などで現地企業と提携し、グローバルなネットワークも築いている。
当研究所の主要業務は、(1)不動産に関する調査研究、(2)不動産鑑定評価、(3)不動産に関するコンサルティングである。役職員518人のうち、不動産鑑定士281人を始はじめとして不動産に関係する多くの資格者を抱えた不動産の専門家集団を形成しており、組織力、研究・開発力、情報力の3つの力を融合し、不動産に関する様々なニーズに対応すべく業務に取り組んでいる。調査研究分野では、「市街地価格指数」(年2回)や「不動産投資家調査」(年2回)などの基礎調査を実施しているほか、これらの定期調査結果を取りまとめた「市場調査レポート」(年2回)などを公表している。
――御研究所は東日本大震災からの復興においても、様々な役割を果たされてきました。
茂木氏 震災により、被災地では物理的被害のほかにも、多くの問題が発生した。その一つが、不動産市場が十分に機能しない中で、被災地の正常な不動産価格をどのように把握するかという問題である。被災して、少なくとも一時的には利用できなくなっている土地の評価をどうすればよいかは大変難しい問題である。被災地の土地の評価は、高台移転のための防災集団移転促進事業等、復旧・復興事業において土地の買取り価格の基準になり、固定資産税などの税務上の評価にも影響してくるので、重要な意味を持つ。
当研究所では、阪神淡路大震災(1995年)の際の経験を生かし、被災から3日後に研究所内に「東日本大震災土地評価連絡会」を立ち上げ、津波の影響を含めた土地評価の在あり方を「東日本大震災に関する土地評価」として取りまとめ、それを11年7月号の期刊誌「不動産調査」で公表した。
その基本的な考え方は、土地価格の形成要因を、街路条件、交通接近条件(鉄道、バス、高速道路、港湾機能、空港)、環境条件(地盤、供給処理施設、住環境)、行政的条件、スティグマ(心理的要因)等に細分化し、それぞれの効用が低下する程度と期間に着目して「震災減価率」(現在は「震災格差修正率」に名称変更)を求めるものである。
日本不動産鑑定士協会連合会でも評価手法を検討し、その考え方は類似しているが、研究所の公表資料の最大の特徴は、全壊地域や農地・山林についても減価率の最大値の目安を提示したことで、これが、国税や固定資産税の評価、地価公示等の公的評価の基礎として活用された。
こうした考え方に基づき、各現場では防災集団移転促進事業の移転元や移転先の評価等復旧・復興事業に関わる大量の評価や公的評価を、時間の制約がある中で迅速に対応し、被災地のニーズに応えるように努めてきた。
――被災後の復興過程で、一部地域では地価の大幅な上昇が見られました。
茂木氏 不動産市場の動きは、最終的には不動産価格に帰結する。本年1月1日付の公示地価を見ると、東北地方全体では、商業地、工業地の下落が続いているものの、下落幅は縮小しており、住宅地は下落から上昇に転じている。だが、もう少し詳細に分析すると、県によって大きな違いがあることが分かる。宮城県、福島県では、全用途の土地価格が上昇しており、とりわけ福島県は住宅地の上昇率が全国第1位、宮城県は工業地の上昇率が第1位(住宅地、商業地は第2位)となっている。一方で、他の東北4県では、すべての用途で地価の下落が続いている(下落幅は縮小)。特に秋田県は、全用途で全国一の下落率だ。
同じ東北地方でありながらこうした違いが生じているのには、地域の潜在力に加えて3つの要因がある、その一つは、宮城県、福島県では、被災地からの移転需要が地価を引き上げていることである。移転需要が大きい代表例がいわき市であり、今回の公示地価の住宅地の上昇率トップ10は、すべていわき市だった。なお、地価上昇が起きているのは、基本的には被災地からの移転先であり、被災地そのものの地価はほぼ横ばいで推移している。 (続く)
もき・ひろし=78年日本不動産研究所入所。不動産の鑑定評価のほか、不動産に関する各種調査・研究、コンサルティング業務に従事。02年さいたま支所長、09年コンサルタント部副部長、12年システム評価部長を歴任し、13年より現職。東京都立大学大学院建築学専攻(修士課程)修了、群馬県出身。不動産鑑定士/再開発プランナー/不動産カウンセラー
























