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プレミアム会員限定点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「地方創生」シリーズ15 宮城県 創造と可能性の東北を創生 日本政策投資銀行東北支店東北復興支援室長佐野成信氏に聞く

住宅新報 2015年6月30日 号 5面

連載: 点検 不動産投資

投資
佐野成信氏

佐野成信氏

 ――宮城県と仙台市の地域特性、優位性について、どのようにお考えですか。

 佐野氏 宮城県は東北6県の4分の1の県内総生産を占めており、東北をけん引するポジションにある。産業構造を産業別の就業者比率で見ると、第3次産業の就業者が全国の66.5%に対し、宮城県では70.5%、仙台では81.2%を占めており、第3次産業中心の地域であることが分かる。宮城県の卸・小売販売額は東北の4割を占め、中でも仙台市は東北の3割を占める商都となっている。ただ、宮城県は民営事業所に占める支店等の割合が全国都道府県の中で最も高く、仙台市を中心に「支店経済」の特性も持っている。

 宮城県、仙台市は、農水産物や人材、立地(東京との近接性など)などに恵まれ、経済的発展のポテンシャルは高いが、これから大きな飛躍に期待したいのが観光産業だ。日本へのインバウンド観光客数は急激に増加しているが、外国人延べ宿泊者数を見ると、全国では3350万人にも達するのに、東北はそのわずか1%(震災前でも2%)を占めるにすぎない。DBJが実施したアジア8地域を対象とする観光意向調査で見ても、地域の認知度は北海道が65%、九州が42%なのに対して、東北は11%と著しく低い。だが、日本国内で訪れてみたい観光資源として挙げられている「温泉」「雪景色」「日本的な街並み・旅館」「桜」などを、東北はすべて兼ね備えており、こうしたポテンシャルを生かすべくこれまで以上に観光振興に注力していくべきだろう。

 これから交通インフラの整備が更に進むことも、大きなプラスとなる。この1年間で、常磐自動車道の全線開通、仙台市営地下鉄東西線開業、仙台空港民営化、新幹線函館延伸といった復興を象徴するプロジェクトが完成する。18年には、三陸沿岸道路の開通が予定されており、宮城~三陸の物流・交流人口の流れが大きく変化することが期待される。

 復興・成長の流れを加速し、創造と可能性の地である「新しい東北」を創生するためには、地域や被災地の自立的な取り組みと地域連携を一層強化する必要がある。宮城県では、「地方版総合戦略」を策定する基本姿勢の一つとして「東北全体としての地方創生に貢献する」ことを掲げているが、各地域も東北全体を底上げする発想が重要だと考える。仙台市も、復興後を見据えた「新たな経済成長」を果たすため、「仙台経済成長デザイン」(目標年度18年)を策定し、量的・質的拡大に努めている。これらの計画を着実に推進していくことが必要だ。

 ――復興や地方創生のポイント、課題は何でしょうか。

 佐野氏 被災地の復興と地方創生は一体であり、業種間(建設業と食料品工業など)・地域間(内陸・沿岸)での復興格差や、需要と供給のミスマッチ(事業再開と販路喪失、雇用のミスマッチなど)、再建された住宅への円滑な移動などが課題である。また、財政面を含めて、インフラの老朽化にどのように対応していくか(公有資産マネジメント)も重要である。

 復興・地方創生で最も重要なのは雇用の創出である。本社機能の移転など企業誘致も大事だが、地方を支えている個人事業者や中小事業者(仙台市では事業所数の98.6%、従業員数の73.9%)の振興をどうするかがポイントになる。そのためには起業の促進による地元産業の育成が一つの鍵を握っている。国家戦略特区に位置づけられた仙台市の「ソーシャル・イノベーション創生特区」は社会起業家や女性起業家の増加に期待がかかる。宮城県の開業率は、都道府県で10位程度だったが、震災後には2位(13年)まで上昇しており、こうした動きをより活性化していく必要がある。また、若者の地方定着のためには、UIJターンに委ねるだけでなく、転出する前の段階で、自分たちの地域をよく知り、愛着を持ち、若者たち自らが地方創生を考える機会をつくることが大切ではないだろうか。

 地方創生の政策目標・施策は、総花的になりがちであるが、長期的な人口ビジョンを踏まえて各地域がどこに対策の重点を置くか、そのメリハリの付け方が重要になってくるだろう。 (終わり)

 さの・しげのぶ=89年北海道東北開発公庫(現日本政策投資銀行)入庫。05年信用リスク管理部課長、06年審査部課長、08年東北支店課長を経て、11年人事部次長に昇格。13年から東北支店東北復興支援室長に就任、現在に至る。北海道大学卒。

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