点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「地方創生」シリーズ03「福岡」 地元社会資本の充実に好循環 福岡リアルティ代表取締役社長松雪恵津男氏に聞く
住宅新報 2015年3月31日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

松雪恵津男氏
――福岡リートが設立された経緯をご教示ください。
松雪氏 設立の中心となったのは、地元最大のディベロッパーである福岡地所である。同社の経営層が米国でリートが果たしている役割や市場の成長を学び、これからは同様な機能が九州でも必要なのではないかという問題認識を持っていた。そうした中で、福岡地所や地元の七社会(九電、九電工、西部ガス、JR九州、西鉄、福銀、西日本シティ)、ロイヤルなどが「地元の優良な不動産を運用対象として世界中の投資家に紹介し、地元に資金を呼び込もう」という共通認識に立って、05年6月に上場したのが福岡リートである。上場時の資産規模は735億円であったが、そのコアアセットとなったのは、福岡地所が拠出したキャナルシティ博多(商業施設)である。背景には、04年にダイエーが福岡ドームと隣接ホテルを米系投資ファンドに売却した際に、地元としてその受け皿がなかったため、残念な思いをしたこともあったようだ。
――投資方針及び現在のポートフォリオの状況はどうでしょうか
松雪氏 投資の基本スタンスは、〝Act Local, Think Global〟ということだ。不動産はもともとローカルな産業であり、九州で投資をすることに福岡を基盤とする当社の強みもある。グローバルな視野を持ちつつも、こうした強みを生かした運用をしていくことが重要だと考えている。
現在の福岡リートの不動産ポートフォリオ(取得価格ベース1647億円)の用途別構成比は、商業施設62.8%、オフィスビル29.5%、その他(住居、ホテル、物流などを含む)7.8%となっている。また、同じ商業施設であっても、テナントの売上げに応じて一部賃料が変動する「アクティブ商業」と定額賃料で安定的な収益を確保できる「パッシブ商業」に分類して、リスク・リターンの最適ミックスを追求している。当初は、スポンサーである福岡地所からの物件取得が多かったが、福岡リートのこれまでの実績に加え、知名度・信用力の向上もあって、最近では第三者からの打診、取得もかなり増えてきている。
地域別では福岡都市圏に76.4%、その他九州地域に23.6%の投資をしており、九州以外には投資をしていない。リートが国内外の資金を集めて地元の不動産に投資することによって、ビルや商業施設などを安定的に保有することができるし、リートに物件を売却した企業は、その資金で新たな開発に取り組むこともできる。結果的に、地元の社会資本が充実するという好循環につながる。また、キャナルシティ博多のような大型商業施設だと、海外からのインバウンドの観光客を取り込むという意味でも、地元への波及効果は大きい。
――福岡はアジアとの距離が極めて近いので、インバウンドには有利ですね。
松雪氏 その通りだ。福岡県への外国人入国者数の推移を見ると、金融危機の影響で09年には50万人割れにまで落ち込んだが、13年には90万人を突破した。入国者を国別に分類すると、韓国61%、台湾15%、中国7%、香港4%、タイ2%、シンガポール1%であり、アジアが全体の94%を占めている。日本全体では、アジアからの入国者は78%であり、これを大きく上回っている。アジアの経済的発展が著しい中で、福岡としてはこれからも「東京より上海、大阪より釜山に近い福岡」という地理的な特性を大いに生かしていくべきだろう。(続く)
まつゆき・えつお=80年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。人事部参事役、管理部長を経て06年に福岡地所(株)へ出向。09年に福岡地所に執行役員開発事業本部副本部長兼ビル事業部長として入社。10年経理部長兼総務部・財務部担当。11年福岡リアルティ常務企画部長、12年常務執行役員を経て現在に至る。
























