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プレミアム会員限定点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「私募ファンド」シリーズ(25)中間レポート リーマン前に近づく利回り 賃料上昇見込む難しい投資判断

住宅新報 2014年12月16日 号 5面

連載: 点検 不動産投資

投資

 アベノミクスによる金融緩和によって、日銀から銀行に流れる資金量(マネタリーベース)は、3年前には100兆円強だったものの、今では300兆円に迫っており、直近でも前年比30%台半ばの伸び率を示しています。また、10月31日付で日銀が発表した追加金融緩和によって、日銀の資金供給量は年間ベースでさらに10~20兆円増加されることになりました。

 ところが、この間に銀行から市中に流れて実際に流通している資金量(マネーストック)は、前年比2~4%程度増加しているにすぎません。民間銀行の貸出で見ても、前年比で1~3%程度の伸びに止まっています。

金融緩和で大量資金

 すなわち、日銀の金融緩和によって銀行には大量の資金が供給されているものの、そこから市中に流れている資金量は、今のところは限定的な状況です。円安やエネルギー価格の下落により、輸出型企業を中心に企業収益は増加してきていますが、ここへきて海外情勢が不透明さを増していることもあり、景気の先行き不透明感は拭えないところです。

 こうした経済環境の中で、賃貸オフィスビル市場(東京、Aクラスビル)の動きを見ると、着実に空室率が低下し、賃料単価も上昇傾向にはあるものの、経済動向と同様、今一つ勢いに欠けるところがあるというのが実感に近いところでしょう。

 一方で、取引利回りはリーマンショック前の水準にかなり近づいています。日本不動産研究所の投資家調査でも、東京丸の内・大手町の取引利回りは3.7%とリーマン前の3.5%まであと一息のところにきており、賃料単価が上昇しない前提では、これ以上の取引利回りの低下余地は限られているといってよいでしょう。そうなると、競争環境の中で投資物件を購入できるかどうかは、賃料単価の上昇をどこまで見込むかにかかってきます。賃料単価が上昇すれば、購入時の利回りが低くとも、将来的には利回りの向上が見込めるからです。

 インタビューを続けている中でわかったことは、今のところ、大半の私募ファンドは賃料上昇を高めに見積もることはしておらず、保守的な水準に止めているということです。このため、競争環境にある不動産の売買が成立しにくい状況になっています。これは、日本の不動産投資市場が円熟味を増してきたことに加え、リーマンショック前に購入した不動産が、その後に大幅に値崩れした経験も生かされているように考えられます。

 日本の私募ファンドの不動産保有額はここ数年減少していますが、その理由の1つは、リーマンショック前に購入して含み損を抱えた物件の価格が次第に回復してきたために、タイミングを見て売却していっていることにあります。そうしたことからも、片方で物件売却を進めている中で、無理をして新たな物件を購入していく方向には、すぐにはならないものと考えられます。

賃料水準は7~8割

 難しいのは、もう少し賃料上昇に力強さが出てきたときに、どこまで賃料上昇を見込んだ投資に踏み切れるかということでしょう。現在の賃料水準は、リーマンショック前の7~8割程度なので、まだ上昇余地があると考えられる一方、10割まで戻してそれが持続的に継続することを期待するのは、かなり無理がありそうです。

 とはいうものの、例えばオポチュニスティックな投資をする外資系のファンドなどが、円安の経済環境下で、アグレッシブな値付けをしてきたときに、市場で傍観できるかというと、これも難しい面がありそうです。ここ暫くは経営判断が試される時期が続くといってよさそうです。

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