点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「私募ファンド」シリーズ(24) 市場拡大へ私募リートに流動性 三菱UFJモルガンスタンレー証券投資銀行本部不動産グループマネージング・ディレクター土岐好隆氏に聞く
住宅新報 2014年12月9日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

土岐好隆氏
「私募ファンド」シリーズ24回目は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資銀行本部の不動産グループマネージング・ディレクター、土岐好隆氏へのインタビュー後半。市場拡大期に入った私募リートを、「国内初の不動産金融商品」と指摘する同氏に、その需要拡大の要因や背景などを聞いた。
――私募リートに対する国内投資家の需要は非常に高いようです。
土岐氏 国内投資家は、期間によって3つのパターンに大きく分けられる。公募ブリッジファンドに代表される1年前後の超短期投資はそのひとつで、手元流動性が積み上がっている事業法人を中心にかなりの需要がある。反対に、期間が短いために機関投資家の関心は低い。
中長期の投資は、従来の私募ファンドに投資を行っていたような投資家の底堅い需要がある。スポンサーシップがあり、出口戦略もある程度見据えた案件には投資しやすく、半面、最大投資家になることはきらう傾向もあって大体5~10件程度の投資家で成立している。更にファンドと位置付けるかは別問題として、外資、日本の機関投資家が現物投資の代替えとして、共同投資にSPCを活用するパターンもある。特に大型案件についてはこの形態が多い。更には、現物が買えない資産管理会社がファンド市場にしみ出してきているケースも各パターンで見られる。
3つ目が、市場が拡大しはじめた私募リートだ。個人的意見ながら、私募リートをもって初めて不動産金融商品だと認めるくらいの不動産の特性を生かした投資商品だ。値動きが少なく、NAV(純資産価値)で買える、手間がかからないなどといった私募リートの長所が投資ニーズに合致したことに加え、デッドからエクイティに投資対象をシフトする地銀においては現物でもない、株式でもないところに「居心地の良さ」を見出したとも言える。地銀は過半数以上、信金も3分の1以上が私募リートに投資しているところに象徴されているといえるだろう。
一方、グローバル市場では東京の割安感が浸透し、10年を超える期間で超優良物件を買いたいというコア投資が表面化してきた。また今後の賃料上昇メリットに加えてキャピタルゲインも期待できる3~5年くらいのファンドにも資金が集まり始めており、バルク買いや地方のホテル取得などに投資をしている。ノンリコースローンのレートも極めて低く、キャップレートが低くても利回りがつくりやすい環境にあるからだ。
――国内で私募リートがスタート当初はかなり苦労したようですが。
土岐氏 当初、私募リートの募集が苦労したのは、タイミングの問題が大きかった。私募リートが本格的にスタートしたのは10、11年ごろで、当時はまだ不動産市場の先行不安や、商品性に対する確固たる自信が持てなかったこと、各私募リートの成長性が分かりづらかったことなどの背景もあるが、「一番最初のタイミングで私募リートに投資する意味づけが見出せなかった」ことが大きな要因だ。最初にファンドのエクイティを購入した投資家には、そのファンドが後から増資する際に優先的にエクイティを購入する権利が与えられる。このため、私募リートの人気が高まってきてからは、既存投資家が先に投資をしてしまい、新規投資家の購入が難しくなるケースも散見されるようになってきた。
――私募リートの流動性については、実際の投資家はどのようにとらえていると思いますか。
土岐氏 一定の残高買い取りやあるいは紹介など、換金できる枠組みは従来通り用意しているが、実際には流動性があることを前提にしている投資はいないうえに、もっぱら買いが優勢なため換金の実績はない。
しかし、今後更に市場を広げていくためには、流動性を高めるマーケットメイクにも取り組む必要があり、それぐらいの商品にしなければならないと感じている。私募リートに投資していない年金も圧倒的に多く、現在約1兆円に達した私募リートの資産規模は先々、3兆円規模までは安定的に成長を続けていくと個人的には見込んでいる。 (終わり)
























