点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授田辺信之 「私募ファンド」シリーズ(23) 短期、長期の投資に二極化 三菱UFJモルガンスタンレー証券投資銀行本部不動産グループマネージング・ディレクター土岐好隆氏に聞く
住宅新報 2014年12月2日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

土岐好隆氏
――はじめに金融機関から見た私募不動産ファンド市場の動向をお願いします。
土岐氏 リーマンショックによって、多くの私募ファンドが多大な損失を被り、以降の新規組成も大幅に減少することとなった。そのため、それまで私募不動産ファンドを手掛けていた同業他社のチームの大半は、消滅するかあるいは事業縮小を余儀なくされた。そうしたなかで当社は、現在も不動産セクターのカバレッジバンカー含め、50人超の人材を擁し、私募ファンドの新規組成を継続的に取り組んでいる。
現在手掛けている案件では、リーマンショック以前のような中期投資のファンドは少なくなった。1年程度の短期のブリッジファンドや、期限のない私募リートが圧倒的多数を占めている。また、少数の投資家による実質的な現物投資において、ファンド形態をとることもある。
――不動産投資の市況をどうみていますか。
土岐氏 不動産需給のタイト化により、直近のキャップレートは、リーマンショック以前の水準まで低下してきており、更なる低下は期待しにくい局面に入っている。このため、実際に物件を取得するには、今後、オフィスの賃料水準が2、3割上昇することを織り込んで、プライシングしないと購入できないケースが増えている。不動産鑑定評価では、根拠がない賃料上昇を見込むことが難しいので、上場リートであっても、資産取得が困難になってきている。こうした局面で、賃料上昇を念頭に置いたエクイティストリーを前提に、円安、低金利のメリットを享受する外資系の投資家の存在感が大きく増してきている。
――今後の価格動向にどのような影響がでてくるでしょうか。
土岐氏 何かの外部要因によって見込んでいた賃料上昇が実現できなかった時には、高値掴みになってしまうとの不安は多少芽生えつつある。一方で、2007、08年当時のオフィス賃料と比べると、現在は6、7割の水準に留まっているのも事実で、不安を持ちつつも、賃料上昇の余力という安心感が現在の投資行動の根底にある。
公募リート含め、本邦の不動産ファンドのアセットマネジャーの多くは、リーマンショックを実体験しているので、バラ色のシナリオを前提にした投資判断を下すことはなく、なかば自虐的に「物件が買えません」というのが合言葉になっている。日本の市場らしい状況ではあるが、正しく健全な市場なのではあろう。
――オフィス賃料は上がるといわれながら、依然、本格的な反転上昇にはないのが実感です。
土岐氏 本格的な賃料上昇には、今まで以上にテナント需要が高まり、需給がタイトになることが大前提だ。増床や新規需要が限定的な一方で、リーマンショック後も、大型開発の割増容積等でSクラスやAクラスの床供給は確実に増えている。
06、07年当時は、不動産ファイナンス関連の海外勢や本邦の新興アセットマネジメント会社等、5万円を超える賃料負担力がある需要が相応に存在したが、足元では代替するような需要が見当たらない。年金や金融機関の運用がリスク許容型にシフトする中で、当該運用を中心としたアセットマネジメント等、国内外の金融・サービス業態に新たな床需要を是非期待したい。 (続く)
どき・よしたか=90年大和証券入社、新設された証券開発部に配属。92年米国大和証券への出向を含め、常に証券化第一線で本邦証券化の第一号案件を開発し、現在証券化の礎を築く。米国でも、不動産証券化商品を多数組成。98年住友海上火災保険入社を経て、99年東京三菱銀行入行、金融商品開発部主任調査役(不動産証券化担当)として大多数の案件を担当。02年三菱証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社、09年不動産投資銀行部長、10年より現職。マンション開発や保有不動産の流動化で顧客のニーズにマッチした新機軸も多数考案。東京大学経済学部卒。
























