これからの賃貸管理に必要なオーナーへの提案 オーナーズエージェント 統括部長先原秀和 提案に必要な3つの視点 収入増・支出減・リスク減
住宅新報 2014年6月24日 号 14面
そもそも我々管理会社は何のために「オーナーへの提案」をするのだろうか? 答えは至ってシンプル、「オーナーの賃貸経営をよりよくするため」だ。では、賃貸経営をよりよくするとは具体的にどういうことなのかだが、大きく分けると次の3つに分類することができる。
(1)賃貸事業の収入が増える、(2)賃貸事業の支出が減る、(3)賃貸事業のリスクが減る。
つまり、これらのいずれか、または複数が叶うものであれば、オーナーの賃貸経営にとって意味がある提案になる。例えば、「この募集条件では決まらないので、募集家賃を下げましょう」も立派な提案の一つだ。いつまでも募集部屋が埋まらなければ収入はゼロ、しかし賃料を下げてでも入居してもらえれば収入が生まれる。3つの分類の一番目を叶える提案になる。
実は、普段の業務で何気なくやっていることも、十分な「オーナー提案」になっていることはたくさんある。「オーナー提案」なんて難しいと構えずに、まずは自信を持ってもらいたい。
提案のフロー
オーナーへの提案ステップをフロー化すると図表1のようになる。
提案項目を探し出すためには、賃貸経営をよくすることができるネタはないかと日頃から意識をし、様々な情報を集めることが求められる。例えば物件の現地に行った際、ゴミ置き場がゴミで散乱していたとする。清掃すれば「散らかっていたゴミ置き場の対応」という業務は終了だ。しかし、これをオーナー提案につなげるためには次のようなことが必要になる。
(1)なぜゴミが散乱してしまうのか?という疑問を持つこと、(2)ゴミが散乱しないようになれば住環境がよくなり、物件の人気が上がるのでないかと気付くこと、(3)ゴミが散乱しないために、ゴミ収集BOXの設置をしてはどうかといったアイデアが出ること。
そして、このゴミ収集BOXの設置という提案ネタを発見したならば、それが提案するに値するかを分析検討するステップに進む。つまり、オーナーの賃貸経営がよくなるのかを検証するステップだ。ここでの分析によって、提案に説得力を付加することができる。
ゴミ収集BOXの設置がオーナー提案に値するとなれば、実際にオーナーに持ち込むことになる。ここでは、オーナーに提案を理解・納得してもらうためのプレゼン力が必要になる。同時に、日頃からのコミュニケーションや情報提供が、オーナーが提案を受け入れてくれるためには大切になる。いくらよい提案であっても、普段はコミュニケーションがないのに、ある日突然、「こうしませんか。かかる費用は○○万円です」と話を投げられて「はい、そうですか」と言うオーナーはいない。オーナーが所有する物件の状況や賃貸市場のトレンドなどを、日常的な訪問や連絡、会報誌やセミナー開催を通じて提供しながら、オーナーとの信頼関係を築いておいてこそ、こちらからの提案が届くことになる。
オーナーが提案を受け入れてくれたならば、その提案を実行するステップになる。実行をした結果、その効果を検証し、必要に応じて改善や方向性の修正をすることも大切だ。
「オーナー提案」は難しく考えすぎるものでもない、しかし行き当たりばったりでなんとなくできるものではないのも確かだ。
時間を生み出す意識が重要
前述した「募集賃料を下げましょう」など、多かれ少なかれ我々は日常業務の中で、「オーナー提案」をしてはいる。しかし、オーナーが期待しているほどにできているかと聞かれて「YES」と言える賃貸管理業者は少ないと思う。そこで、オーナー提案が「なぜできないのか?」を考えてみよう。
主な理由は、「提案している時間が取れない」「何を提案していいのか分からない」の2つだろう。ということは、これらを解消できれば提案ができるようになる。
賃貸管理業務は、非常に多岐にわたり、しかも細かな業務の集合体だ。入居者募集に始まり、建物や設備の保守管理、入居者対応、出納業務、退去時対応等々、日々やることは山のようにある。
高い能力や専門性は必要とはしないが、対応に時間を要する業務が多いのも賃貸管理業の特徴だろう。入居者からの一般的なサービスリクエスト対応、簡単な現場対応、新規契約書や更新書類の作成、契約締結・郵送物の回収、家賃集金や軽微な滞納督促などはそれに当たるといえる。
こういった業務はもちろん大切な仕事であるし、それを担当する人員も必要だ。しかし、例えば「簡単な現場対応」を担当するスタッフが、先ほどのゴミ収集BOXの設置というオーナー提案にたどり着けるかといえば、難しいのではないかと思う。
忙しい管理業務の現場においては、ゴミ置き場の清掃後、すぐに次の現場に行くことが求められるからだ。
より効率的に多くの現場を回ることを役割として与えられているスタッフに、時間を必要とするオーナー提案項目の発見や分析をしろというのは、その要求自体に矛盾がある。
私は、オーナー提案をするスタッフと、管理業務のルーティンワークを担当するスタッフとは別にすることが望ましいと考えている。管理業務のルーティンワークを経験し知識や能力を身につけたスタッフが、オーナー提案中心の業務にシフトし、ルーティンワークスタッフから情報をもらいながら、提案をしていくのが理想かもしれない。しかし、オーナー提案専門の人員を配置するのが難しいことも理解できる。
マニュアルの整備を
だからこそ、業務マニュアルを整備して皆が同じ対応をできるようにする、外部に任せられる業務はアウトソーシングするなど、現在の人数体制の中から「時間を生み出す」ことを意識し実行することが大切だと感じている。
賃貸管理業務の現場では、とにかく時間に追われバタバタしていることが多い。
その原因は、業務が効率化されておらず各スタッフが様々な業務を兼務している、社内スタッフでやらなくてもよい仕事まで社員がやっているなど、「無駄」によるものが少なくない。
社内スタッフの時間の使い方、使うべきところをはっきりさせ、そうではない部分は「割り切る」ことで、今まではなかった時間を生み出すことができるはずだ。
賃貸事業の収入を増やす
提案するネタを見つけ出すことは、基本的なことである一方で難しい問題でもある。この問題を解決するには、前述した3分類の視点から物事を考えるとよい。
まず、賃貸事業の収入を増やすことは、賃貸経営をよくする方法として、最も分かりやすく、またオーナーにも喜ばれる。
「収入を増やす」視点で考えるにあたって、まずオーナーにはどのような収入・支出があり、キャッシュフローをどう考えるのかを図表にまとめたので参考にしてもらいたい。
管理会社から提案しやすいものは、図表2の物件保有時の収入を増やす方法になる。つまり、図表3の、(1)予想最大賃料収入や(4)その他収入を増やすことを狙うのだが、それを達成するアイデアとしては次のようなものが考えられる。
(1)間取りを人気のあるものに変更する、(2)部屋の用途をニーズのあるものに変える(コンバージョン)、(3)人気のある設備などを導入する、(4)デザイン性を高めるリノベーションをする、(5)募集条件を変更する(ペット飼育可にするなど)、(6)太陽光パネルを設置して売電収入を得る、(7)屋外看板の設置による収入を得る。
いろいろな方法が考えられるが、共通しているのは「市場」を知っている必要があるということだ。「どういった建物や部屋が人気なのか?」「新たな収入を生むようなサービス・商品はないのか?」という情報を知らなければ、収入を増やすネタは見つからない。
また、目先だけではなく中長期の視野をもって考えることも大切だ。例えば、(3)の人気のある設備を導入するだが、当然導入時には費用がかかる。一時的には収入が増えるどころか逆になる。
しかし、その設備導入の結果、物件に人気が出て家賃が上がり空室も減る。そして、その設備が寿命を迎えるまでに、設備導入および維持費用を超える収入増があるならば賃貸経営にとってはプラスになる。
※実際には、この基本的な考え方に加えて、その設備導入費用の回収にかかる期間の長短、導入にローンを使った場合などを複合的に考える。



























