競争激化の賃貸市場 勝ち残る物件を探る 1 入居者に選ばれる住宅とは 空室率、明らかに上昇 高まる市場への危機感
住宅新報 2014年6月24日 号 12面

少子高齢化などを背景に、我が国ではすでに住宅市場は量的な充足の時代を迎えている。賃貸住宅市場も同様。その空室率は全国平均で現状20%近くに達し、今後も上昇は続くとみられ、質的な向上がより大きな課題となっている。要は一昔前に比べ賃貸住宅の経営は難しくなっているということだ。そこで、ここでは新規に賃貸住宅を建設する上で、資産活用や投資に適した今の時代が求める「良質な賃貸住宅」について考えていきたい。 (住生活ジャーナリスト・田中直輝)
まず、「良質な賃貸住宅」について理解する前に、近年の賃貸住宅の市場動向について確認しておきたい。国土交通省が今年4月に発表した「建築着工統計調査報告(平成25年度分)」によると、貸家(賃貸住宅)は36万9993戸(前年度比15.3%増)となり、2年連続の増加となっていた。リーマンショック以降、減少基調を続けてきたが、東日本大震災の発生による新規賃貸住宅需要の発生、更には相続税制の改正に伴う全国的な資産活用ニーズの拡大が、賃貸住宅の新設着工の増加を下支えした格好である。
市場は堅調な推移へ
今後の市場についてもこうした背景から堅調な推移が見込まれている。三大都市圏を中心に賃貸住宅の供給を行っている旭化成ホームズでは、13年度の新規受注の伸び率が08年比で241%(08年度を100とした数値)となっていた。5月末に行われた新商品「ヘーベルメゾン ニューサフォレ」の説明会で同社の阿久津富和集合住宅営業本部長は、「今年度も前年とほぼ同水準で推移している。業界全体も同じ状況でないか」と語った上で、「入居者の獲得競争はより激化するのではないか」と、今後の市場環境について危機感を示した。
「分譲賃貸」との競争も
というのも、賃貸住宅の空室率上昇は明らかな状況だからだ。総務省の「平成20年度住宅・土地統計調査」によると、20年10月1日時点の賃貸住宅(公営借家含む)は2183万300戸。そのうち、空室は409万2500戸で、空室率は18.7%となっている。そして、現時点の空室率は、様々な調査によると全国ベースで20%近くに達しているとの見方が一般的で、中には23%とする調査もある。地方では既に空室率が40%を超えているという状況もあるようだ。
空室率は今後、改善されないと考えられる。なぜなら、我が国は超高齢化、少子化の時代に入っており、賃貸のみならず住宅需要の大勢はニーズの縮小局面にあるといわざるをえないからだ。また、現状のように賃貸住宅が新規に供給されることで、今後、既存賃貸住宅の中では競争力を失う物件が多数発生する可能性が強い。あまり指摘されないが、分譲マンションで賃貸として貸し出される物件も増えており、そうした物件も確実に市場の空室率を押し上げる要因となっている。
「長期安定」のために
つまり、これから賃貸住宅を建設、供給するというのは、元々、激しい競争の中で事業を始めるということに他ならないのだ。そのため、20年、30年後を見据えた長期安定経営を実現するための工夫やアイデアを備えた賃貸住宅が必須となり、それはオーナーはもちろん、賃貸住宅の供給者などにも必要とされる考え方になる。
ところで、そもそも、投資や資産活用としてオーナーが賃貸住宅経営をするメリットとは何だろうか。もちろん投資であるから、利益を得られるということ。更にできればそれが長期安定的に続けられること、そして、相続税対策などがある。しかし、これまでに説明してきたように、入居者獲得競争が激しくなる中で、特徴のない賃貸住宅では早晩、安定した賃貸経営が難しくなることは否めないだろう。
既に、地方の郊外部で供給される賃貸住宅の中には、新築時から満室経営が実現できていない物件さえある。また、都市部においては1ルームタイプの供給に対し、規制に乗り出している自治体もあるなど、賃貸住宅を巡る環境は厳しさを増している。
ファミリー層への訴求を 「戸建て賃貸」に高まる注目
ここからは、良質な賃貸住宅、入居者に選ばれる賃貸住宅について具体的に考えていきたい。その条件の一つに、ファミリー向け賃貸住宅など居住面積に余裕のある物件がある。子育てがしやすいファミリータイプの良質な物件数は依然として少ないとされるため、入居者確保がしやすいからだ。
「遮音」で優位性
そこで、「テラスハウス」や「戸建て賃貸住宅」が注目を集めている。賃貸住宅でありながら、持ち家のように暮らしたいというニーズを満たすためだ。テラスハウス(メゾネットタイプ、長屋建て)は、横並びの複数戸(上下階で1戸)で構成される形態。各戸にテラスと専用の庭や駐車場があり、居住空間には階段が設置される。一般的な賃貸住宅においてトラブルになる上下階の音の問題(遮音性)を気にしないですむため、子育てファミリー層にとっては本当に魅力だ。
ファミリー層は子育て期間中、転居しにくいため、長期間居住することが多く、テラスハウスは長期にわたる安定経営が可能な物件になる。戸建て賃貸は丸1棟が賃貸で、魅力はテラスハウスと同様で、両隣に対する音の問題が皆無であるため、入居者の暮らしやすさはさらに上をいく。狭小・変形敷地の活用に有効で、複数棟建設すれば一つの街のような景観となり、環境の良さもアピールすることができる。
テラスハウスや戸建て賃貸住宅は、1ルームタイプや1LDKといった狭小賃貸と比べ決して利回りは高くないが、良質なファミリー入居者層に長く住んでもらえやすい。また、駅から遠いなどといった立地上の不利をカバーすることができ、法人との契約が多いことなども特徴で、経営の安定化が図りやすいこともオーナーには魅力的である。
なお、賃貸住宅の「遮音性」については、入居者が物件に住んだ上で最も気にすることであり、賃貸住宅のトラブルの中で最上位を占める事項である。そのため最近では、大手ハウスメーカーなどの賃貸住宅では、マンション並みの遮音性を実現した物件も増えてきている。
























