点検 不動産投資 宮城大学事業構想学部教授 田辺信之 「環境と不動産」シリーズ(29) 「テナント選好」でプラス評価 日本不動産研究所環境評価室主席専門役 内田輝明氏に聞く
住宅新報 2014年4月22日 号 5面
連載: 点検 不動産投資

日本不動産研究所 内田輝明氏
――環境不動産に対する基本認識を教えてください。
内田氏 環境分野においては主に不動産の環境性能の定量化に向けた調査(不動産投資家調査の特別アンケート)や、環境不動産の普及開発のための講演会やシンポジウム、CASBEEと不動産評価検討小委員会などの公益活動に取り組んでいる。このほか、国土交通省が行う調査研究や環境不動産普及推進機構の支援も手掛け、日本政策投資銀行と連携してDBJグリーンビルディング認証もこの春スタートした。
環境不動産への関心は非常に高まっており、有望な分野だ。市場の評価が追いついてはいないものの、先駆的な不動産オーナーが環境性能の水準を高めており、環境性能評価のニーズも以前に比べて増えている。環境性能や鑑定評価に関するデータを数多く蓄積して、環境不動産の環境性能と経済性に関する検証を行うことが我々の役割だと認識している。
――環境不動産に対する投資家、オーナーの関心度はいかがでしょう。
内田氏 09年4月に、不動産投資家170社を対象に不動産投資で重視する環境性能についてアンケート調査を行った。その結果、耐震性能や設備の適切な維持更新の重視度は高かったが、省エネルギー・省資源の重視度は低く、環境不動産の普及やその経済価値向上には、重視度の低い環境性能に関する社会的認識の向上が必要なことが分かった。東日本大震災後の11年10月に行った調査でも基本的な傾向に変化はなかったが、大震災の影響を受けて、省エネルギー・省資源や事業継続(BCP)に関する環境性能の重視度の上昇が目立った。
――東日本大震災から3年が経過し、投資家に意識の変化はありましたか。
内田氏 その後、年1回実施している不動産投資家アンケート調査の結果をみると、投資判断時に不動産の環境配慮を考慮しようとする意識は依然高く、環境不動産の市場価値については、大多数が理論的にはプラス(増価)と判断している。期間の特定はないものの長期的にもプラスに評価されるであろうとの共通認識にあることが分かった。
現時点では市場価値への影響は不明確だ。しかし、先行きの環境不動産をプラスに評価する理由としては、「テナントが選好すると見込まれる」が最多となっており、13年調査では「光熱費などのコスト削減」を挙げる回答が急増した。環境配慮の影響は、東京のAクラスビルから表面化し、地方のB・Cクラスビルでは価値の実現が劣後する可能性が高いと推測される。
また、不動産の環境性能指標の必要性に関しては、適切な「ものさし」を求める回答が増加している。理由としては、「投資物件としての優位性を保つためには環境性能の上位ランク評価が必要と考えるため」とする回答が増加した。これは、投資家が環境不動産に対する意識や関心を高めていることを裏付けるものとみられる。
――環境不動産の普及を目指す関係者はどのような問題意識をもっていますか。
内田氏 当研究所は、国交省地価調査課の環境配慮型不動産と鑑定評価に関する研究会(09年度)、市場形成に取り組む同省土地市場課(当時)の環境不動産懇談会(11月・12年度)の委託を受け、不動産鑑定評価と市場形成の側面から環境不動産に関する議論をとりまとめた。12年4月にとりまとめた「環境不動産懇談会提言」では、情報の可視化・流通、既存ストックの環境対応、テナントの需要喚起が環境不動産の普及促進のキーワードとされた。
13年から環境不動産普及促進機構の支援業務として、全国の支社・支所組織を活用して地方相談窓口も開設し、金融機関や設計事務所、投資家などの相談に対応している。 (続く)
うちだ・てるあき=95年日本不動産研究所入所、研究部研究員等を経て06年から不動産の環境リスク・環境性能評価等に関する調査研究・コンサルティング等を担当。現在、CASBEEと不動産評価検討小委員会委員、CASBEE不動産評価員養成委員会委員、小平市土地利用審議会委員。早稲田大学法学部卒、大学院社会科学研究科修士。
























