シリーズ――「高齢社会」本番 (7) 東京建物が高齢者住宅事業に本格参入 陣頭指揮を執る加藤久利・住宅賃貸事業部長に聞く サ高住、3年で20棟目標に
住宅新報 2012年11月6日 号 12面
連載: 「高齢社会」本番

加藤久利・住宅賃貸事業部長
立地が左右する賃料
――第1号の「グレイプス浅草」は総戸数99戸の大規模物件。開設から2年近く経ち、現在の稼働状況は。
「満室稼働している。駅から近い立地なので、当初は元気な高齢者を対象にしていたが、介護サービス付きを求める人が多いことが分かり、途中から約3分の1の住戸を介護向けに切り替えた。それにより、リーシングのペースが早まり、結果的には、予定よりも半年ほど早い1年半で満室になった」
「入居を考える人は、最期まで住み続けることを重視している。介護サービスを付加することで安心感が高まったからだと思う」
――第2弾の計画地は、東武東上線ふじみ野駅から徒歩14分の立地。「浅草」と違い、郊外型にしたのはなぜか。
「『浅草』は好立地のため、月額費用が20万円台から30万円台後半で、一般の人から見るとやや高めの賃料になる。今後はマーケットのボリュームゾーンである年金需給者が無理なく暮らせる物件を供給していきたい」
「そうなると、賃料や食費、サービス費を含めた月額負担は15万円台後半から20万円台だ。そこから逆算して立地を選定した。間取りは要介護者向けをメインにする。夫婦で入居したいというニーズもあるので、うち30戸ほどは広いタイプにする予定だ」
――今後の開発計画は。
「14年までの3年間で20棟を目標にしている。既に5物件分の用地についてはメドがついた。1物件当たりの規模は70~80戸で、半分を20m2前後のワンルームタイプにしていく」
――用地を取得する際、マンションディベロッパーと競合になるのか。
「むしろ、戸建て分譲と競合になることが多い。立地や価格面の条件が似ている」
「今、建築費が上がっているので、それをどのように吸収していくかが、事業を推進するうえでの課題だ」
住宅と介護の融合が鍵
――現在、サ高住の登録数は7万戸を超える。不動産や医療、介護など様々な業種が参入している。どのように差別化を図るのか。
「マーケットを見ると、量は増えているが、質は十分ではない状況だ。当社では、安心して長く住んでもらうことを大前提に考え、高齢者が亡くなるまで終身にわたり居住することができる終身建物賃貸借で契約を結んでいる」
――サ高住の最大の特質は〝施設〟ではなく、〝住宅〟であるところ。一般の住宅のように、我が家と感じられる工夫が必要だが。
「プライバシーが確保されつつ、安心して暮らせる、施設にはない住宅の魅力を出したい。つまり、住宅と介護をどう融合させるかという難しい課題に挑戦しなければならない。例えば個室の出入り口が施設と同じような引き戸では我が家という雰囲気は生まれない。と言って、重い開きドアでは車椅子での出入りや介護がしにくい」
「住宅として建物の基本性能も大切になる。当社としては、『ブリリア』ブランドのマンション事業で発揮してきた強みを、この事業でも生かしたい。住宅と介護の融合は、快適なマンションづくりを目指してきたディベロッパーとして、難しくても挑戦しがいのあるテーマだ」
ファンドへの売却も
――国土交通省など3省庁でヘルスケアリート創設に関する検討が進められている。リートへの売却の可能性は。
「ヘルスケアリートには注目している。社会性の高い事業を投資対象としていく難しさなど、多彩な議論が展開されると思うからだ。当社の戦略としてはリートではなく、将来保有する物件が一定量に達した段階で、グループ内に私募ファンドを立ち上げ、出口戦略として売却することなどを検討している」

















