不動産投資家のAI活用が従来の「業務効率化」から「事業成長・競争力強化」へと急速に目的転換している。JLLリサーチが2月3日に公表した「JLLグローバル不動産テック調査2025」によると、不動産投資家の88%がすでにAIの試験運用を開始。バリューチェーン全体で平均5つのユースケースを同時進行するなど、導入は想定以上のスピードで進む。
同調査では、AI導入目標の上位はコスト削減よりも収益創出に重心が移った。AIに期待するメリットとして「新たな投資機会の発掘」「投資判断におけるデータドリブンな優位性の獲得」などが上位に挙がり、市場の不確実性が高まる局面で『稼ぐAI』を求める姿勢が鮮明になった。
投資家の投資意欲も強い。調査では87%が「AI導入のために不動産テック関連予算を増額」すると回答。上位の投資領域は、AI実装やデジタル基盤の更新、サイバー・データセキュリティー強化など「AI導入・準備」に集中した。
一方で課題も大きい。60%超の企業が、試験運用を超えた大規模実装に向けた戦略的・組織的・技術的準備が整っていないとされ、先進企業との「AI格差」が拡大している。ロードマップや統一的な技術戦略、推進専任者の確保など基盤整備の遅れが、競争力の足かせになりかねない。
背景には、テクノロジー対応物件への評価の高まりもある。投資家の93%が「テクノロジーに対応した高品質な不動産はより優れたパフォーマンスとリターンをもたらす」と回答し、テナント側でも94%が「エネルギー効率と入居体験を高めるテクノロジー対応型スペースには、より多くの賃料を支払う意思がある」とした。AI活用は運用効率にとどまらず、資産価値や賃料にも波及する可能性がある。
同レポートは、2025年時点の試験運用の中心が市場動向分析、リスク予測、データ統合・標準化、不動産の自動評価モデル、文書要約などに広がると指摘。さらに将来像として、複数ツールやデータを組み合わせ推論し、自律的に実行する「AIエージェント」への関心が高まっているとした。商業用不動産市場は「今後3年以内、遅くとも2030年までにAIを活用した新たな戦略モデルによって再構築される」とし、対応の遅れが損失につながると警鐘を鳴らしている。



