日本の記憶されるべき木造建築と聞くと「東大寺大仏殿」「法隆寺五重塔」「正倉院正倉」が思い浮かびます。しかし、異質ながら記憶されるべき木造建築群があります。筆者が若かりし頃、設計事務所に勤務していたときに、所長や先輩所員に「これだけは見ておけ」と何度も聞かされたクセ玉系木造建築物です。
空中に浮遊 クセ球系の筆頭は「三仏寺投入堂」(鳥取県東伯郡三朝町)です。岩の崖に張り付くように建築されています。スタイルとしては京都の清水寺と同じ「懸崖(けんがい)造り」とされます。しかし、清水寺は立体格子を組んで、その上に寺院を置いたのに対し、投入堂はお堂を高い位置に置いて空中に浮遊するように見せるため、できるだけ少なく、簡易な部材で崖にはめ込んでいます。垂直に伸びる少ない柱は、投入堂の浮遊感の演出に抜群の効果を出しています。
次は「浄土院浄土堂」(兵庫県小野市)です。建立が1192年の浄土堂をはじめ、拝殿や薬師堂も国宝や重文に指定されています。浄土堂の外観は実に質素でそっけなく、内部を知り、期待して訪問すると肩透かしを喰います。18メートル四方の内部空間の中心には金箔で彩られた快慶作の阿弥陀仏三尊(像高5.3メートル)が安置され、構造物は全て朱塗りされています。更に特徴的なのは阿弥陀仏三尊を囲う太い4本の柱です。この柱はスパン(柱間)が6メートルもあり、4本の柱だけが構造体を支えるという、日本の寺院では少ない、ダイナミックな構造です。


















