居酒屋の詩 (66) 花は寝て鳥も何処か帰りけん 我はねぐらへ各駅の旅
住宅新報 2019年9月10日 号 11面
連載: 居酒屋の詩

その日は総武線一本で帰ろうと思い、久しぶりに御茶ノ水で居酒屋を探した。同様の目的でこの辺りをさまよったのは、はるか昔の気がする。あのときもそうだったが、今回もピンとくる店がなかなか見つからない。一度通った道を何度も行ったり来たり。しまいには店の前で呼び込みをしている兄ちゃんに怪訝な目を向けられる始末。(自分はただ、今日の日を振り返って静かに酒が飲みたいだけ)なのにである。
疲れきったところで、御茶ノ水駅の聖橋口から中央大学駿河台記念館に向かって坂を下りかけたところにある大衆酒場「ひろちゃん」に入った。こういうときは、もはや何も期待していない。
しかし、ここは案外よかった。御茶ノ水の大衆酒場は学生がたむろする狭苦しい店が多い中で、広いフロアにテーブル席がゆったりと配置されていて、大学の学生食堂のようである。席はほどほど埋まっていたが間隔があるのでうるさくはない。とはいえ、茫漠たる寂寥感を抱いた夜であった。

















