大手住宅メーカー賃貸戦略 長期的な競争力を磨く 立地と商品力を両輪に
住宅新報 2019年4月9日 号 1面
国交省が公表している、貸家の新設住宅着工の月別推移を見ると、直近1年間(18年3月~19年2月)では11カ月で前年同月比を下回っている(グラフ参照)。18年通年では7年ぶりに前年比減少に転じると共に、3年ぶりに40万戸を下回った。相続税対策としてのアパート建築の需要はピークを過ぎ、金融機関もアパートローン融資を厳格化するなど、賃貸住宅市場には逆風が吹いている。
よい立地に、よい物件を建てて、安定した家賃収入を得る――。それが賃貸住宅事業の基本だ。
基本を徹底するのが積水ハウスだ。従来から都市の中心部や成長が見込める郡部など好立地を軸に開拓を進めてきたが、10年に行政区や都市をA・B・Cに区分するエリアマーケティングを導入した。Aエリアは必ず獲得すべき、建築が見込める立地、Bエリアは無理して獲得する必要のない周辺地といった位置付けで、Cエリアには手を出さないなど地域特性を明確化する。全体的なランク付けは行政区や市ごとに実施し、シェアの推移を把握する。
市の中でも町単位のエリア分けは支店に任せている。経営企画部の神谷佳之部長は「Aエリアを中心に展開する。立地条件は東京や地方都市で交通網に温度差がある。市町村合併の効果で交通網の整備が進み、商業施設の誘致も活発化した場所もある。Bエリアは市自体のポテンシャルは高くなくとも、絞り込めばAに匹敵するエリアもある」と説明する。
ハード、ソフトの質向上
一方、昨年4月に実施した機構改革の中で、シャーメゾン(積水ハウスの賃貸住宅ブランド)・特建事業の組織体制を全国的に刷新。首都圏を中心にシャーメゾン支店の体制を再編。支店の中では戸建てと賃貸の営業担当者が混在するケースがあったが、完全に組織ごとに分割し専門性の強化を図った。また、同時期にエリアマーケティングにおいてSエリアを新設した。これはAエリアの中でも特に需要と供給のバランスがよいエリアという位置付け。ローラー展開などを駆使し重点的に取り組んでいる。
物件は3、4階建ての工業化住宅の比率と1棟当たりの単価が上昇。3、4階建ての増加を支えるのは独自のβ構法だ。この構法は柱の位置を自由に設計できるもの。空間設計の自由度を高める中で、高級感の提供も追求していく。
一方、入居率は19年1月期通期で97.8%を計上した。管理室数は61万9494室に上る。3月や9月に開催する賃貸住宅経営の実例を体験するイベント「シャーメゾンフェスタ」では、設計担当者がコンセプトや対象となる入居者像を説明する。
神谷部長は「10年後、15年後にも市場競争力が落ちないようにしていくことが大事。オーナーにもしっかりと長期の経営を提案していきたい」と語る。現在は約90%の案件でグループ会社の積和不動産と共同歩調を取る。入居者募集、賃貸管理の観点からオーナーの要望に断りを入れるケースもあるという。
今後について、神谷部長は「部分的に見れば、供給過剰になっているところはあるかもしれない。ただ時間が経てば物件の老朽化の問題もあり、需要はある。まだ賃貸事業でやるべきことはたくさんあり、市場のニーズに応えたい」と展望する。
一方、木造賃貸の性能向上も着々と進む。住友林業は16年4月にウォールフレーム(WF)構法をリリースし、品質の向上を図った。これは「30年後も選ばれる賃貸住宅」という方針で開発されたもの。建物内部に大断面集成柱「ビッグコラム」を採用。構造上必要な内部の壁を少なくし、将来のリフォームなどに備える。
一般的に鉄骨造やRC造と比べ、木造賃貸は遮音性に課題がある。住友林業は3月から、新たに開発した高遮音床を木造賃貸住宅「フォレストメゾン」に採用し、課題克服を進めている。
高遮音床は上階の足音や声が響く不満を解消するもので、住友ゴム工業、マックストン社と共同で開発。一般鉄骨造に比べて、高遮音床は6ランク上のLL値(軽量床衝撃音)35、3ランク上のLH値(重量床衝撃音)50を達成した。
独自開発のオリジナル部材「防振ゴム」と「遮音モルタル板」を採用。ゴムシートに突起状のゴムを付けることで、防振ゴムと遮音モルタル板の間に隙間を確保。上階からの振動を防振ゴムで吸収し下階へ伝えない仕組みだ(イラスト参照)。
高遮音床は18年8月に特許出願済み。物件に採用した際の価格への反映は坪当たり約4万7000円(対象床面積当たり)。19年度の採用目標には50棟を掲げている。
入居者への啓発も
旭化成ホームズは2月半ばから、賃貸住宅「ヘーベルメゾン」において災害時におけるレジリエンス(災害への抵抗力・復旧力)強化を目的とした設備仕様「防災パッケージ」を提案。この仕様は「防災はハードとソフトのミックス」という観点から、共用部のエントランスに「防災ステーション」を設けた。災害対策のための設備を提供すると共に、入居者全員に災害を乗り越える意識を促す。
防災パッケージでは、商品仕様を担当者が募集代理店に直接説明する勉強会を開催。1月22日に東京、千葉、埼玉の代理店を対象に開いており、5月からは神奈川、中部、関西と順次開催していく。勉強会では災害への最低限の備えや近所との共助といった意識など啓発的な内容も盛り込む。代理店を通じて入居者に防災への意識を持ってもらうためだ。
従来から、旭化成ホームズでは付加価値のある物件を提案してきた。入居者の普遍的なニーズを捉え、社会的な課題の解決を見据えた「コミュニティ賃貸」シリーズは人気商品だ。
入居に際してルールを設けるなど特定のハードルがあるため、当初の募集や管理運営は旭化成ホームズの専門部署が担当。こうした体制が防災パッケージで担当者が直接説明する下地になっている。
コミュニティ賃貸は商品内容が周知されていく中で、運営をグループ会社の旭化成不動産レジデンスに引き渡してきた。同シリーズは現在、ペット共生型、子育て共感型、働く女性を対象に防犯面を向上させた「ニューサフォレ」、アクティブシニアを主対象にした「ヘーベルヴィレッジ」といったラインアップだが、現在もヘーベルヴィレッジはシニア事業推進部が担当している。
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相続税対策や不動産投資などで営業戦略が過熱した時期があったことは否定できない。縮小する市場に対して絶対に有効と言えるような施策はない。ハウスメーカーをはじめとした業界には足元を見つめ、自社の強みや路線を改めて検証する努力が求められている。
























