居酒屋の詩 (36) 吹く風のさそふともなき梢より 落つる枯れ葉の音ぞ淋しき
住宅新報 2019年2月5日 号 11面
連載: 居酒屋の詩
100点満点の店など存在しない。それは分かっているが、通うにつれ満足していた店にも不満が出てくる。例えば私が好むカウンター席だが、料理をするときに火の上でフライパンを五徳にこすりつける音、皿を洗う音、洗った皿を重ね置きするときの険高い音。こうしたことに文句をいうことはできないが、それだけに気になりだすといたたまれなくなる。それでも気の利いた店なら、客がいれば洗った皿をそっと置くぐらいの配慮はする。親しい店と客の関係は夫婦のようなものか。最初は相思相愛だが時を経るごとに注文が多くなる。溜まる注文をうまく言葉に出せれば長続きするが、腹におさめていると、いずれは縁が切れてしまう。何も言わず身を引くこともあれば、気まずい雰囲気をつくってしまい足が遠のくこともある。いずれにしても、一度は相思相愛になった店を失うことは淋しいものだ。

















