不動産業は「永続」がサービス -1000年続く会社を目指す- 〝先行投資〟で空き家・空き地管理 神奈川県茅ケ崎市・小浜土地建物 仕事を通じて「国づくり」担う
住宅新報 2018年7月24日 号 13面
小浜土地建物は年間売上高約6億円、従業員数34人(パート含む、7月13日現在)で地域密着型の不動産事業者。主力は売買・賃貸仲介で、管理や自社物件の賃貸、土地分譲なども手掛けている。
当初から空き地に着目
同社の特徴の一つは、創業2年目から無料で、生い茂った草木の処理などの空き地管理を地域で行っていることだ。これらの活動の動機について、大八木社長は「一つは当然、事業を手掛ける地域の環境のため。しかしもう一つには、管理する空き地に看板を設置させてもらい宣伝につなげる意図や、将来的には売却などの土地活用の際に、当社を利用してもらうためという先行投資という面もある」と率直に話す。
実際に、管理の受託から売買仲介などの依頼へとスムーズにつながる物件の多かった時期には、年間最大3000万円程度の売り上げにつながっていた。
更に、大八木社長がNPO法人空家・空地管理センターの上田真一代表理事と個人的に親交があったため、17年からは同センターの登録企業として広く空き家や空き地の管理を請け負っている。
しかし、同エリアはマリンスポーツファンなどをはじめとして人気が高く、空き家や空き地の売却にも困ることの少ない地域性であり、元々その数は多くはない。更に辻堂駅北口の工場跡地再開発「湘南C-X(シークロス)」などにより、近隣地域の人気と地価は一層上昇したこともあって、「最大で2000人いた顧客の地主さんも、今では300人程度に減少した」(大八木社長)という。
言ってしまえば、現状は空き家・空き地の管理は赤字の事業で、宣伝効果などを加味しても利益につながるとは考えにくい。それでも、同社は空き家・空き地の管理を続けていく方針だ。
不動産業の「研究開発」
その理由の一つとして、大八木社長は「不動産業としての〝研究開発費〟」という考え方を語る。「不動産業、とりわけ仲介業などは、製造業のような研究開発というものが基本的にない。では、それに相当するのは何かといえば、地域力の向上と人材の育成だ」(大八木社長)という信念のもと、街の景観を保って地域価値を高め、また外部のセミナーなどにも会社の経費で積極的に社員を参加させている。
地域の不動産価値は、鉄道路線や大型開発、人口動態など抗いがたい外部要因によって左右されやすい面がある。とはいえ、ただ受け身の態勢でそれに対応するのではなく、積極的に地域のために動き、また自らを高めていく努力は無駄にはならない。それは巡り巡って、自社の事業に成長をもたらすという読みが同社にはある。
もう一つの理由としては、「自分たちの利益は最後、まずはお客様のために」という社是もある。業務を進める上では、まず法的な正当性を判断し、次に顧客にとってよりよい手段を考える。そしてwin-winの関係を構築していく、という仕事のあり方を心掛けているという。
「しかしそれは、本当は自分で言うことではない。実際、地域のイベントなどでも当社はおそらく近隣企業で一番出資していると思うが、本当にそういうことは表に出したくないというか、〝陰ながら貢献〟が好き」と、大八木社長はやや照れた様子を見せる。
理想と現実のバランス
同社の〝実利〟と〝奉仕〟の双方を重視する姿勢は、夏目漱石『草枕』の有名な冒頭、「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される」の一節を思わせる。人の生活に深く関わる不動産業は、理詰めの損得勘定だけ、あるいは逆に想いだけの行動では長期的な成長は難しく、その両立が重要となるのかもしれない。
だからこそ同社は、理想と現実のバランスを考えながら、地域と共に発展していくことを目指すのだろう。その具体的なアプローチの一つとして、17年からは西湘エリアで戸建て再生の事業にも挑戦。現在はテスト的に3棟を手掛けており、将来的には、高価格帯の物件が多い湘南地域でもリーズナブルな住まいの提供していきたい考えだ。
大八木社長は「そもそも、土地という〝自分で作ったわけではないもの〟で商売をしているのだから、仕事を通じてその土地、地域を守っていかなければ」と想いを述べる。そして「その点、戦後の不動産業は、利益優先で街を崩してきたのではないか。これからは本当の意味で街をよくしていくべきだと思うし、街づくりは地域づくり、国づくりにもつながる。それができる会社を目指す」と大きなビジョンを掲げる。
街のためにも継続重視
大きなビジョンとしてはもう一つ、「1000年続く会社を目指す」(大八木社長)という目標もある。地域の不動産業者は、街と住民に対する責任として事業を継続していくことが非常に大切で、「永続こそがサービス」(同)だという考え方からだ。
たとえ強い思いがあっても、社会には「意地を通せば窮屈だ」(『草枕』)という一面はある。しかし、それでも永続的な地域づくりという「意地」を通そうとする同社は、おそらく今後も「住みやすい」世の中づくりの一端を担っていくのだろう。(佐藤順真)




















