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スタンダード会員限定幸福論的「住宅論」◇3 資産価値を維持するには 「買主も将来は売主」という発想

住宅新報 2018年7月17日 号 11面

連載: 幸福論的「住宅論」

住まい・くらし
住宅という社会資源の〝適正配分〟が求められている中古流通市場

住宅という社会資源の〝適正配分〟が求められている中古流通市場

 オークションではないが、その住宅に最も高い価値を見いだした人が、最も高い価格で買っていく――そんな社会をつくることはできないものだろうか。問題はそうした買い手をどうやって見つけ出すかということである。

   ◇     ◇

 そのためには、中古住宅市場の抜本的改革が必要になる。取引されるたびに中古住宅の価格が上がっていくような市場にしなければならない。早稲田大学客員教授の赤井厚雄氏は「不動産の資産価値を維持していくためには、その不動産を社会的に最も有効に活用できる買い手に渡していくことが求められる。つまり、仲介という仕事は、資源の適正配分という重要な使命を担っている」と指摘する。

 現状は、売主は少しでも高く売りたい、買主はなるべく安く買いたいという旧態然とした市場である。これでは中古住宅市場の根本的活性化は望めない。両者はどこまでも利害が対立するし、買主にとって「中古住宅は安いからこそ魅力がある」ということであれば、住宅は取引されるたびに値を下げていくしかないからである。

両者の利害一致

 そうではなくて、「買主も将来は売主になる」という発想の転換が必要である。買主もいずれ売主になると考えれば、中古住宅市場がその資産価値を維持あるいは上昇させるように働いたほうが両者にとって利益になるし、社会的にも意義のある市場となる。 中古住宅市場の根本的活性化のためには、売主と買主を利益相反の関係に置くのではなく、資産価値の維持・上昇という点で利害が一致する関係へと脱却させなければならない。

 では、最初の問いに戻って、住宅に最も高い価値を見い出し最も高い値を付け得る人をどうやれば探し出すことができるのだろうか。AI(人工知能)の力と、仲介者の〝人を読む力〟を組み合わせる方法が考えられる。

 日本大学スポーツ科学部教授で不動産経済学が専門の清水千弘氏は「米国では2000年頃から不動産仲介の工程にある価格査定や税金の計算、ローンの診断などの部分はAIに置き換えられてきた。そのような業務はもはや専門家がやる仕事ではなくなっている」と話す。

 そして、こう指摘する。  「これからの仲介会社が注力すべきことはマッチング機能の充実だ。つまり、どんな人がどんな思いで家を買おうとしているのか、その思いを実現するためにはどんな家がふさわしいのかということを考えなければならない」

ストックを良質化

 前出の赤井教授も「新築住宅は、例えば子育て世帯など同じような世帯を対象に大量に売ればよかったが、ストック市場では住宅を異なる世代間で流通させる必要がある。そのためには(買い手の思いを実現するため)、リノベーションなどの提案能力、アイデアと創造力が求められている」と話す。

 こうして、その中古住宅に最もふさわしい買い手を見つけることに全力投球する仲介業者が増えれば、赤井教授が言う〝中古住宅という資源の適正配分〟が社会的スケールで進んでいく。更にはリノベーションなどの技術が進化し、流通するたびにストックが良質化され、資産価値の維持・上昇につながっていく。

 その結果、既存住宅市場が根本的に活性化すれば、買い手は「とにかく安く買えればいい」という短絡的思考は採らなくなる。売り手も「少しでも高く売りたい」という気持ちではなく「この住宅を生かして幸せになってくれる人に買ってもらいたい」という意識に変わるだろう。

 そうなれば、売り手と買い手は対立関係ではなく、ストックの資産価値を未来に向けて継承していく〝資産リレー〟の走者となる。仲介業者の仕事はそのバトンリレーの円滑化である。更に言えば、利潤中心の商取引とは一線を画す〝個人間の資産リレー〟を、価値創造の場へとも変革していく仕事である。

      (住宅新報顧問)

 

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