「小工事」大切に、地域と歩む 築いた信頼で20期連続増収増益 さくら住宅(神奈川県横浜市) 手掛けた工事は「私が保証書」
住宅新報 2018年6月12日 号 11面
さくら住宅が本社を構えるのは、神奈川県横浜市栄区の桂台エリア。70年代に丘陵地を造成して開発した閑静な住宅地であり、全国のいわゆる「ニュータウン」の例に漏れず、人と建物の高齢化が進む地域でもある。
同社はこのエリアで97年に創業し、横浜市南西部をはじめ近隣エリアのリフォーム全般を手掛けている。2期目から現在まで連続で増収増益であり、従業員は現在約50人と決して大きな会社ではないものの、経産省の「先進的なリフォーム事業者表彰」や第5回「日本で一番大切にしたい会社」大賞の審査委員会特別賞などを受賞。テレビや新聞など、大手メディアで紹介される機会も多い。
たとえ赤字でも誠実に
事業面で同社の特徴を最もよく表しているのは、受注に占める「小工事」の割合だ。17年度実績では、受注総件数1841件のうち755件、実に4割が障子の張り替えや水漏れ対応など、平均受注額約4万3000円の小額な工事。当然、件数は多くとも売り上げには直結せず、全体の売上高約12億5000万円のうち、「小工事」は2.7%の約3300万円に過ぎない。
しかし同社は、たとえ赤字でもこの「小工事」を決しておろそかにはしない。といっても、それを〝撒き餌〟に大口の顧客をつかもうという意図ではない。二宮生憲(たかのり)社長は「困っている人がいるからただ行くだけ。『リフォームを通じて社会の役に立つ』という企業理念の実践でもある」と語る。
地域柄、多くの住宅が老朽化してリフォームを要する一方、高齢化した住民にとっては「信頼できる業者」の判断は難しい。そこで、些細な工事にもしっかりと対応する同社は、着実に地域の信頼を築き、更に口コミで顧客の輪を広げていった。
加えて二宮社長は、仕事の質にも妥協しない。工事は必ず自社で手掛け、きめ細かく正確な作業を行い、アフターフォローも欠かさない。迅速な対応も重視し、深夜に携帯電話で水漏れの相談を受けたときなどは自身が寝間着姿のまま駆け付けたこともある。
結果として大口受注も順調に舞い込み、業績は順調に拡大。評判を聞いた新規顧客からの依頼も増えたが、「『仕事を与えてやっている』と言う人には『では結構です』と返すし、無茶な予定変更などには『無理です』と言う」(二宮社長)姿勢を貫く。
同時に、意識の低い業者に対しても手厳しい。「ペイントハウス(旧社名、後のティエムシー、09年に事業停止)の流れをくむ塗装業者が、『どうせ客は何を塗っても分からない』と料金に対して大幅に質の劣る塗料を使うと言っていたときには本当に最悪だと思った」と名指しで憤る。
仕事を頼む側と受ける側は対等であり、双方が誠実さをもって協力し合うことで初めてよいリフォーム工事ができるという同社の思想。ある意味で顧客を選ぶ経営方針だ。
仕事の水準を保っている分、施工料金も低くはない。適正な料金を受け取ることで、その後のフォローも含めた安心と安全を提供していくという方針だ。二宮社長は「(設備や工事の)保証書はないか、と聞かれたときには『私が保証書だ』と答える。会社がある限り、当社の手掛けた工事は保証する」と胸を張る。
地域貢献にも積極的で、本社建物の一部を交流スペース「さくらラウンジ」として開放。6月で10周年を迎える同ラウンジでは、無料の飲料提供やギャラリーとしての貸し出しを行っており、「近隣住民の憩いの場」となっている。
そんな同社の〝ファン〟は顧客の枠を越え、非上場ながら同社の株の62.7%を101人の顧客が保有(3月末現在)し、株主として会社を支えている。これは金融機関などにも「非常に珍しい」と驚かれる、同社の大きな特色だ。
また最近では二宮社長がそのノウハウをまとめた書籍『住宅リフォームを考えたら必ず読む本』(あさ出版、6月3日発行)が発売され、オンラインストアのアマゾンでリフォーム書籍部門1位に輝いている(6月8日現在)。
住まいと人生支える
多様な活動と各方面からの高評価が印象的な同社だが、二宮社長は「正直なところ表彰はもういらないし、急速な業績拡大も望まない」と断言。続けて、「それよりも、引き続きよい工事をコツコツと続けていくことに集中したい」。その言葉の真偽は、近隣住民からの圧倒的な支持という形で裏付けられている。
二宮社長は同書の中で、「『どう住みたいか』は『どう生きたいか』と同意義」だと記している。その意味では、リフォーム業者は住まいの「かかりつけ医」であると共に、顧客の人生そのものを左右する立場でもある。誠実で優れたリフォーム業者とは、高齢者の充実した人生と既存住宅の有効活用という2つの社会課題に同時に対応できる、稀有な存在なのかもしれない。 (佐藤順真)




















