その店は京王線笹塚駅前の商店街「観音通り」(写真)の奥左手にあった。昭和の風情が色濃く残る商店街を歩いていくのが好きで、紺地に白字の暖簾をくぐるときはいつも心がときめいた。
仕入れたネタ自慢、スポーツ、競馬、人物評が得意の主人と、飾らない物言いが客から好かれているママさんとの〝夫婦(めおと)経営〟が40年以上も続いていた。ママさんは、常連客でも度を越した飲み方をしたり、大きな声で仲間と騒いだりすると遠慮なく叱った。ママさんが意識していたかどうかは分からないが、「店の質は、客の質」である。
突然の閉店をメールで知らせてくれたのは、笹塚駅近くで不動産業を経営するAさんだった。そういえば、その店の常連客の中には、「昔はよく、おたくの営業マンが来てたなぁ」と言って、懐かしい昔話をしてくれた不動産屋さんもいた。もう、そういう人たちとも会えなくなったことが淋しい。


















